「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では、2005年版の基本的な考え方を踏襲し、エネルギーでは一つの指標(推定エネルギー必要量)、栄養素では五つの指標(推定平均必要量・推奨量・目安量・耐容上限量・目標量)が示された。これらの指標については、これまで十分な理解と現場での適切な活用がなされてこなかった。今回の改定では「上限量」が「耐容上限量」に変更されただけのようにみえるが、「食事摂取基準は単に事実の記述を目的とするものではなく、各種の栄養関連業務に活用することを念頭においている」という考えから、総論の部分が「策定の基礎理論」と「活用の基礎理論」に分けられ、詳細な記述がなされた。この「基礎理論」を十分に理解することが、食事摂取基準の理解と活用の第一歩として重要である。
見過ごされがちであるが、栄養素に対する五つの指標の並び順がかわり「目標量」が最後となった。このことは、推定平均必要量・推奨量・目安量が「摂取不足からの回避」を、耐容上限量が「過剰摂取による健康障害からの回避」を目的としているのに対し、目標量は「生活習慣病の一次予防」をめざしたものであり、例えば推奨量とは異なる考え方で適用する必要性を示している。目標量を適用する際には、①数か月間ではなく、数年間以上にわたり実行できる、②生活習慣病の一次予防は、対象とする栄養素だけで図れるものではなく、他の危険因子や予防因子にも配慮した総合的な予防対策が必要であり、「摂取不足からの回避」や「過剰摂取による健康障害からの回避」を目的とした場合とは明らかに異なる。 活用に関して、2005年版における「個人」と「集団」、「計画」と「評価」というマトリックスは、米国・カナダの食事摂取基準での考え方をそのまま輸入したものであり、わが国の現場に適用させようとすると種々の困難が生じていた。そのため、今回の改定では「活用の基礎理論」のなかで、できるだけ論理的かつ具体的に活用の考え方が示された。まず、活用の基本分類は、「食事改善」と「給食管理」の二つに分けられた。「食事改善」は、対象者を個人あるいは集団として扱う場合では活用上の理論がそれぞれ異なるため、二つに分けられた。その際の理論は、米国・カナダの食事摂取基準の考え方に基づいており、2005年版と変わるものではない。ただし、前回少なからぬ混乱を招いていた「個人」と「集団」に関しては、「目の前に複数の人がいても、食事摂取状態の評価や食事指導などを個別に行う場合は、「個人」として取り扱う」と記載された。
「給食管理」については、特定の集団に対する食事計画とそれに基づく適切な品質管理による継続的な食事の提供および摂取状況の評価、すなわちPDCAサイクル中で食事摂取基準を適用していくことが肝要であり、その考え方や手順が示されている。しかし、これらに関して十分に信頼できる研究報告は不足しており、例えば昼食など一部の食事を提供する場合に給与栄養目標量を設定するための根拠データを含めて、実践現場からのエビデンスの発信がこれからの大きな課題である。
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