平成20年改訂の新学習指導要領の特徴は、すべての教科において子どもたちの「言語活動の充実」を提言したことにある。これは、PISA(Programme for International Student Assessment :経済開発機構による生徒の学習到達度調査)において、問題解決場面が設定されたとき、日本の子ども(15歳)には解決に関して自分なりの考えを表現することに課題があったことに由来する。
理科の学習指導要領において、この課題解決のためになされた措置は、子どもに論理的に思考する学習習慣をつけることと、その成果を言葉として明瞭に表現し、記憶させることである。この措置を表すキーワードは「考察」と「科学概念」である。二つの事項を軸にした理科授業は、小中学校共通して次のような学習活動として具現化されよう。
見通しをもった、あるいは目的意識をもった観察・実験(予想や仮説の設定)→予想や仮説を検証するための観察・実験→表やグラフを活用した結果の整理→予想や仮説と観察・実験結果との照合(考察)→結論としての考察にかかわる言葉(科学概念)による表現。
さらに指導内容構成において、粒子・エネルギー・生命・地球という四概念の柱を設定し、子どもが学習した内容の一つひとつを系統化し、理解させる措置も図られている。
一連の問題解決の過程を子どもに確実に定着させるために必要なことは、彼らに自分の考え表現させ、それを観察・実験を通して変容することを実感させることにある。理科授業において、考え・表現させる学習習慣を子どもに指導することが、こうした課題達成においては必要な措置となろう。『小学校学習指導要領解説・理科編』 では、子どもに自然事象についての自分の考えを表現させる手段として、イメージを図や絵で表すことが提言されている。 例えば、食塩が水に溶解したときの状況を子どもにイメージさせたとしよう。多くの子どもは目に見えなくなった食塩について、○△□等の形をモデルにして、これらが水中に点在している様子を表現する。ここには肉眼では見えなくなった食塩が、粒子として保存されている様子がリアルに記述されている。そして、子どもはこのモデルの有効性として、食塩水の水を蒸発させ、改めて食塩が溶けて見えなくなっても保存されていることを証明したりする。子どもはこうした方法が、予想や考察としての表現として、意味のあることを実感していくのである。
容易に想像できるように、このような学習を体験した子どもは、中学校で必然的に原子論を受容しよう。その素地が小学校で培われているからである。子どもは自分で考え・表現することを通して、観察・実験を通してこれを徐々に精度の高い科学概念へと更新していく過程を学習していくのである。考察と科学概念が適切に理科授業へ位置づけられたときに得られる成果であり、これからの理科教育として期待される姿である。
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