建帛社だより 「つくし」

 平成21年9月1日号

受け継がれる保育・幼児教育の理念

大阪薫英女子短期大学教授 柏原 栄子

 期大学・大学に平成生まれの若者が入学してきている。まさしく「昭和も遠くなりにけり」である。昨今の時代や社会の変容には、めまぐるしいものがある。とりわけ情報機器の発展は大変著しく、人々の生活を大きく変えてきた。平成元年頃はまだ携帯電話を所持している学生はほとんどいなかった。今では携帯電話は生活の必需品、実習中の連絡もメールが活用されるようになってきている。私自身も、外出時に自宅に忘れてきたならば、いいようのない不安に襲われてしまう。人の生活や思いが、携帯電話という小さな機器に振りまわされている。この小さくて大きな機器の功罪を私たちは十分理解して、活用していく必要がありそうだ。

 類は、自らが幸せになり、生活を豊かにするために科学技術を開発してきた。でも本当に今、「人間の安寧や幸福」を求めて私たちは日々の生活を過ごしているのだろうか。不況といわれながら、一方では物があふれている。これからの未来を担う子どもたちに情報機器の発達を含め、豊かで幸せな社会を私たち大人がつくり上げてきたとは言い難い状況である。

 後、わが国は教育改革を繰り返し実施してきた。昭和23年、新教育における保育・幼児教育の羅針盤として倉橋惣三らを中心に幼児教育の手引きである「保育要領」が文部省から発行された。昭和31年には「幼稚園教育要領」が制定(昭和39年改訂)、昭和40年には「保育所保育指針」が厚生省から通知され、その後、社会の要請に応じて改訂・改定が重ねられた。平成20年3月には現行の「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」が告示され、日本の教育・保育内容の基準として提示されている。

 が国の保育の基本方針ともいえるこの「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」は時代に応じて改訂・改定が進められて今日に至っている。しかし、子どもの健やかな成長・発達を援助し、子どもの幸福を保障していく営みであるとする保育・幼児教育の理念や方向性は、戦後から今まで一貫して脈脈と流れている。私たちは激変する時代の変化にただ合わせただけの保育・幼児教育のあり方を求めるだけではなく、保育の基盤をなしている本質を探り、理論を追求する求道者でありたいものである。

 のような激変の時代のなかで、昭和34年に創立された建帛社は今年で半世紀を迎えた。昭和56年4月に「保育者と乳幼児が愛と信頼関係の中で『人間を育てる』」という保育理念を掲げ建帛社から発行した初版『現代保育原理』は、今年『新 現代保育原理』として、前編者の理念を受け継いで発行することができた。特に『現代保育原理』の編者であった土山牧羔先生・土山忠子先生・山本和美先生の、時代を超えて変わることのない保育理論についてご理解いただき、引き継いで出版する機会を与えてくださったことに、編者・執筆者一同心から感謝している。

 の五十年に向けて、ますますのご発展を祈念したい。