新学習指導要領は、算数的活動を通して思考力・判断力・表現力の育成を目指している。内容的には、ゆとり路線の明らかな転換であり、今から20年前の学習指導要領の内容に戻った感がある。これは、数学教育の世界からみても、また国家戦略の観点からみても望ましいものと受け止める。教育の根本は、人間の無限の可能性を信じることである。教育制度や政策もそれを保障するものでなくてはならない。教育内容の「厳選」―ここまでしか教えてはいけないという制約は、教師にとっても子どもにとっても不幸なことと言えよう。 確かに現場の教師は「楽」になった。しかし、子どもの学力は伸びたかというと全く逆である。そこで全国学力テストが実施されることになった。世界的な流れより遅れてきたので、「知識」と「活用」までを取り入れたテストの導入となった。 しかしながら、時代の舵は大きく転換したのである。「活用」について今後とも重視されることは間違いないだろう。たとえ、学力テストの予算が削減されたとしても、「活用」という視点は、PISA調査が示すように世界的な流れであり、また、日本の子どもたちの学びの実感に対する意識の低さからすると、当然やらなくてはならないことである。 さて、そのうえで、今回の教育課程の改訂にあたって危惧することがある。それは「現場の空気」である。もう一つ盛り上がらないのである。新しい内容が増えるというのに、教材研究の期待感や危機感があまりにも乏しい。 筆者は、学校訪問や研究会への参加はかなりの数行っているが、講演をしてもピンときていないようである。昭和40年代に行われた数学教育の現代化の頃の研究会はもっと熱気を帯びていた。あの当時は、集合や関数について、多くの小学校教師が学んだものであった。それに対して今回の改訂は明らかに志気の盛り上がりに欠けている。これでは、淡々と改訂の内容が実施されるだけで、本当に算数数学の面白さが伝わるであろうか。 算数数学の面白さを伝えるためには、マクロにみれば科学技術の向上という国の政策の重点化が必要である。ミクロにみれば、教材研究の面白さを若い教師に教えることである。 筆者は、大学の公開講座や教師塾で教材研究の面白さを伝えている。幸いにも好評である。また、この度、『小学校算数科の指導』を仲間の大学人とともに建帛社より出版した。教材研究についてわかりやすく解説した。本書の作成に当たっては、従来からあった類書の知恵を借りつつ、それらの弱点も克服するように心掛けた。教育学部の学生および若い教師をターゲットに執筆ならびに編集した。ぜひ利用してほしい。 若い教師は学びたいのである。その場や材料がないだけである。ぜひとも若い世代に教材研究の面白さを伝えていきたいものである。
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