建帛社だより 「つくし」

 平成23年9月1日号

サイレント・ボランティア


―遠隔地の心を言葉に乗せて―

大坂城南女子短期大学教授  前田 崇博

 「こんちきちん、こんちきちん」。これは、私の故郷である京都の夏の風物詩である祇園祭りのお囃子です。今年この音色が被災地仙台の七夕祭で流れました。元来、この祭典は貞観11(869)年に東北地方で起きた貞観地震の悪疫を鎮めるために行われた御霊会が起源という由来があるため、時空を超えた形での文化伝承型ボランティアが実現したわけです。「都人」の復旧を願う心がお囃子に乗って「みちのく」に伝わったことでしょう。
 回の東日本大震災でさまざまなボランティア活動が展開されるようになりました。直接活動としての地域復旧や施設ボランティア、間接活動としての義援金などの募金などが代表的なものです。
 の中で特筆したいのは、言葉を介したサイレント・ボランティアです。
 「頑張って」「負けないで」等の激励ワードがメールや手紙とともに被災地に届けられています。教え子の保育士は園児の寄せ書きを被災地へ送りました。「しっかりごはんたべてね」などのかわいらしい文字が挿絵とともに並んでいました。また、缶詰を大量に寄付した介護福祉士の教え子からは「缶詰よりもそれを収納したダンボールの激励メッセージのほうが喜ばれた」という電話がきました。両者とも遠隔地の被災者に何かしたいという想いが込められたもので、言葉による間接的なボランティア活動です。直接身体を使わなくても、伝えられる心のメッセージがボランティアとして形を代えて、小さなカウンセリング活動を代行してくれているのです。
 本ユニセフ協会が全国から絵本などを募集して被災地に『ちっちゃな図書館』をつくるプロジェクトを進めたのも、間接活動、一種のサイレント・ボランティアです。絵本とともに遠隔地の子どもたちの心が、被災地の子どもたちにも大切な何かを伝えることでしょう。
 た、海外からも多くのメッセージが届けられています。じつは、私の勤務する大学では4月に北欧実習を悩みながらも敢行しました。予約していたフィンランドのレストランにTeehetkiJapanille(頑張れ日本)と書かれていたそうです。帰国後「先生、今、私たちは世界中から応援されているね」と感涙を流していました。
 会福祉援助技術には「ストレングス」という専門用語があります。困難に陥った人を側面的に援助してその人のもつ復元力を喚起するという意味をもちます。まさに、国内外が被災地に対してストレングスをしているように実感します。
 れらの各国のさまざまな援助に対して、日本政府は六月に世界への情報発信窓口であるニューヨークのタイムズ・スクエアで感謝の意を電子ボードの文字で配信しました。迅速かつ礼儀正しいと絶賛されましたが、サイレント・サンクスといったところでしょうか。
 後に、今回尽力されたすべてのボランティアの方に紹介したい言葉があります。震災で家屋と母親を亡くした小学生の女の子が、七夕の短冊にしたためた一文です。
 『ボランティアに来てくれたお兄さん・お姉さんに幸せが沢山きますように☆』
 日本は必ず復旧・復興すると確信しています。