建帛社だより 「つくし」

 平成29年9月1日号

産官学がスクラムを組んで「世界最高齢というチャンス!」に挑む

静岡福祉大学教授・元産官学連携推進センター長  田﨑 裕美

 本の少子高齢社会は,AI(人工知能)の発展とICT(情報通信)の変化,グローバル社会の進展等を背景に大きな転換期を迎えている。
 のような中,大学・短期大学等の教育機関・研究機関は,社会全体の「知」の拠点として重要な役割を担っている。この背景には,平成16年に「国立大学法人法」,平成18年に「新教育基本法」が制定され,研究成果の社会還元が大学の使命として明記されたことがある。
 方創生の有力な政策として,大学等の技術シーズに基づく起業支援や新産業創出への期待は高い。
 岡福祉大学は,県中部の焼津市にある開学14年目を迎えた小規模な大学である。福祉の総合大学であることから,産官学連携推進センターには,地域の福祉的課題に関する様々な相談が年30件余寄せられる。そこで,福祉の未来を創造する三種類の事業を紹介させていただきたい。
 一は,平成24年静岡県緊急雇用創出事業,平成26年静岡県ホテル・旅館組合「絆・温泉事業」での「おもてなしの環境整備」である。高齢になっても,障害があっても,家族や友人とともに,富士山を眺め,おいしい食事や温泉を楽しめることは人生を豊かに彩り,QOLを高める。静岡県内のホテル・旅館の実態調査を行い,手軽にできるハード面・ソフト面の環境整備方法を検討した。その結果を基に,入浴介助と食事等に視点をあて,職員の研修プログラムを企画・実施した。ビジネスモデルプランとして,要介護者と家族の温泉旅行,介護福祉施設の利用者と職員の温泉旅行等を提案させていただいた。
 二は,地元の工業製品を健康・福祉の視点から,リプロデュースする取り組みである。結十布(ゆいとうふ)は,地元の染め物を多重構造のモダンな風呂敷に加工したものである。結び方や包み方が複雑で,指を動かし結ぶ際には,短期記憶や認知機能を多用する。この製品を使って,高齢者福祉施設等における認知症予防プログラムを,研究開発した。また,伝統的産業の活性化を目的に,「脳の積極活動」のための声と音と香りの木工模型の商品開発を静岡県工業技術研究所,音響メーカーとともに行った。さらに,福祉用具として,障害者福祉施設内における障害児(者)移動システム障害者用室内走行リフトのシートを開発した。
 三が,介護等の福祉現場の課題解決につながる製品開発である。平成28年より,静岡県工業技術研究所と本学教員等の連携研究で,腰痛予防の支援により介護人材を守る「腰の筋電・姿勢計測に基づく介護の教育指導支援システムの開発」が進行している。
 高齢社会の新たなニーズを新製品開発にいかす産官学連携ならではの事業が成果につながっている。
 「世界最高齢というチャンス」 これは,株式会社リクルートが「HELPMANJAPANプロジェクト」で掲げた言葉である。福祉を視点に,日本の未来をえがく産官学連携事業への期待は大きい。