建帛社だより 「つくし」

 平成29年9月1日号

「食品機能学」:その面白さを伝えるには?

中部大学教授  津田 孝範

 学で「食品機能学」や「基礎食品栄養・機能学」を教えている。同様に食品機能にかかわる研究を行っているから,文字どおり私の研究室は「食品機能学研究室」ということになる。学生諸君に対しては,食品機能学とは「先端のバイオに関する知見をもとにして,食品の生理機能を明らかにし,これを我々の健康に役立てるという,いわば食の先端バイオサイエンス」云々,と格好よくいっている。さらに「食の価値を高めて人を幸せにできる……」とまでいっている。これを聞けば“面白そう”“素晴らしい研究ができそう”と想像できるではないか(独りよがり?)。
 ころが,である。私の所属する専攻では,一部の学生以外にこの分野にあまり興味をもってもらえないらしい。もちろん食品機能・栄養学分野だけではなく,食品分析や食品製造・加工の分野もある。学生にはこれらの分野のほうがわかりやすいのかもしれない。「難しそう……」といわれて敬遠されると自分の講義内容に問題があるのかな,などと考え込んでしまう。自分としては,食品機能学のファンを一人でも増やしたい,というスタンスで講義を行っている。将来を担う若い学生諸君にどのように伝えたらよいのだろうか?もしかしたらこのような悩みは,私の置かれた状況に特有なのかもしれない。ミスマッチは私自身なのか?いや,食品栄養科学専攻に所属しているではないか。それにしても和食が食べたいと思っている人に無理にフレンチを進めているのかな,とも思ってしまう。でも,フレンチもいいね,食べたいです,といってもらえないか。
 ァンを増やすため,ない知恵を振り絞って,少しでも身近なことから興味をもってくれるように色々と工夫しているつもりである。例をあげると,これまで多くの民間企業と一緒に仕事をさせていただいているが,あくまで公表の可能な範囲で実際の共同研究成果を講義の際に紹介している。加えて現在市販されている健康機能にかかわる身近な食品の事例は欠かせない。さらに講義の質を維持して,学生に興味をもってもらうためには,最新の研究動向を紹介するだけではなく,自分の研究室で(聴講学生の先輩達が)実際に研究している内容も関連させて紹介しなくてはならない。そのためには,できるだけ自ら質の高い研究をしなくてはならないし,その内容をわかりやすく説明する必要がある。この内容の理解のために生化学や細胞生物学,分子生物学の基礎的な内容の振り返りも必要となる。これらを限られた時間の中で準備し伝えなければならない。ハードルは高い。
 間では,食への興味は尽きることはないし,健康との関連は多くの人達の関心事である。講義の中で学生諸君に基本的な知識を取得させながら,どのようにメッセージを伝えればよいのか,模索する日々である。