日本人の食事摂取基準(2020年版)に対応した改訂版。栄養学の入門書として,食品学も含めて初学者向けに解説。大学等の教養科目に最適。
内容紹介
まえがき
序 文
近年,バイオサイエンス系各分野の進歩は著しいが,わけても人々の生活と密接に関連する医学・保健系の科学の急速な進歩の流れの中にあって,栄養学はさまざまな状況の変化に対応すべく多様な転換を経て今日に至っている。
本来,日常の生活を支える食物として,何をどれだけ摂ればよいのか,という,人類開闢以来の基本的課題からスタートしていながら,栄養の世界は18世紀末ごろまでほとんど自然科学としての体系をなしていなかった。それでも食事は,人々にとって不可欠の生活行動である。さまざまに変化する環境の下で,摂取している食の内容が日々の暮らしの中で適切なものとなっているかいないか,そのための科学的知識が求められるのは時代を超えた自然の成り行きであり,それにこたえるのが栄養学の責務である。
このような人々のニーズにこたえて科学として発展してきた栄養学は,次々と人間にとって健康を維持するための必須の栄養素を発見し,ほぼ20世紀の前半までに基本的な栄養素欠乏症を克服したといわれ,人々はごく日常的に,総合栄養剤を摂取することで栄養は万全と考えるようになった。しかし実際には,何不足ないと思われた飽食の時代のもとでの健康の維持・増進に対応する,はるかに複雑で困難な課題が栄養学につきつけられていたのである。これに気づかされた契機が生活習慣病の到来である。生活習慣病は栄養素の不足のみでなく過剰やアンバランスな摂取,運動不足,ストレス不適応など,人体側の栄養状態を左右する多様な因子がかかわって発症するものである。遺伝などによる個人差や,長い「未病期」などの特徴から,人々が自ら自身の健康を守る意識と行動を抜きにしては効果的な予が果たせないという,これまでになかった課題をもたらした。そのため,この新しい「健康づくり」の時代に,市民一人ひとりが自分の健康を自身で守るためのツールとしての栄養学の知識を身につけることが重要となってきたのである。
本書はそのような課題を視野に置き,健康づくりやスポーツなどで健康かつ活発な生活の啓発を目指す人材を育成する広範な科学教育課程で利用されることを意図して企画されたものである。この意図をご理解いただき,本書が広く活用されることが,著者一同の喜びとするところである。
終わりにあたり,企画・編集から出版に至るまで多くのご苦労をおかけした建帛社の方々に深甚なる謝意を表したい。
2013年11 月
編者 小林修平
第3 版にあたって
2019 年12 月,厚生労働省より「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」が公表された。2015年版を踏襲しつつ,生活習慣病の一次予防および重症化予防に加え,高齢者の低栄養やフレイル予防も視野に入れ,2015年版をさらに発展,充実させたものとなっている。それを受けて,関連の記述をあらためるとともに,その他,統計の更新等を行い,第3版を刊行することとなった。
前版にも増して,本書が広く活用されることを願う。
2021年2 月
編者 小林修平
目 次
第1章 人と栄養
1.栄養とは
2.栄養学の歴史
第2章 健康と栄養・食生活
1.生体リズム
2.健康の三大原則(食事,運動,休養)
第3章 食品の成分と機能
1.三大栄養素
2.ビタミン・ミネラル
3.体内の水分
4.食品の機能性
第4章 からだのしくみと栄養素の働き
1.からだのしくみ
2.消化器の機能
3.主要な栄養素の消化・吸収
4.エネルギー代謝
第5章 栄養状態の評価(栄養アセスメント)
1.栄養アセスメント
2.食生活調査
3.身体計測
4.臨床診査・臨床検査
第6章 食事摂取基準と私たちの食生活
1.日本人の食事摂取基準(2020年版)
2.食事バランスガイド
3.健康づくりのための身体活動基準
4.健康づくりのための睡眠指針2014
第7章 ライフステージと栄養
1.女性の性周期(月経周期)
2.妊娠(胎児期)・授乳期の栄養
3.成長期の栄養
4.成人期の栄養
5.高齢期の栄養
第8章 日常生活と栄養
1.運動と栄養
2.ストレスと栄養
3.栄養と免疫
第9章 生活習慣病と栄養
1.生活習慣病の概要
2.生活習慣病の病態
3.生活習慣病の予防と食生活
第10章 現代社会の食と栄養
1.食品の安全性
2.機能性食品とサプリメント
3.食生活の多様化
この本をみた方に
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