新しい保育士養成課程・教職課程,要領・指針に対応した改訂版。保育者が専門職としてその専門性を確立・担保していくための視点で編集。
内容紹介
まえがき
はじめに
~「保育者論」から「保育職論」へ~
近年,保育に求められるニーズが,拡大の一途をたどっている。核家族化が進み,また,母親の就労等から,子ども・子育てを取り巻く環境が大きく変化しているわが国において,従来からの子育ての役割が親のみに集中しがちであったことがその大きな要因のひとつであろう。そのため,必然的に社会的な支援のニーズが高まるわけであるが,その最大の担い手となるのが,幼稚園・保育所・認定こども園といった保育施設であり,直接保育を実施する幼稚園教諭,保育士といった専門職である。
保育所の保育士には,子どもの保育だけでなく,保護者への支援の役割も『児童福祉法』に明確に位置づけられ,子どもの保育の内容についても,『保育所保育指針』の告示化によって法的に定められるようになった。すなわち,役割の拡大にとどまらず,質的な担保も必要になってきている。資格としても,任用資格から国家資格に移行し,名称独占資格に改められ,ますます保育士の役割が重要視されるようになった。そして,保育所の社会的責任は,①子どもの人権の尊重,②地域社会と情報提供,③個人情報の保護と苦情解決にあり,この社会的責任の実践が保育職に就くものの責任として求められている。こうした役割は,幼稚園にも同様に求められており,保育所とのボーダーレス化が進んできていることから,当然,幼稚園教諭に求められる役割も拡大している。
ところで,このような幼稚園・保育所などで保育を行う人の総称として,今までいわゆる「保育者」という用語が使用されている。本書であえて「保育職」と名付けるのは,これからその役割がますます重要視される保育者が,専門職,専門職業集団として社会的に位置づけられることを願ってのことである。さらにいえば,「保育者」という個人が専門性を向上していく必要があるのはもちろんであるが,その専門性をより確立していくためには,「専門職性」が担保されなければならないと考えたからである。
本書は,幼稚園教諭・保育士の養成施設における必修科目である「教師論」「幼児教育職・保育職論」「保育者論」への対応テキストとして編集されているが,こうした専門性,専門職性を意識して保育を学んでほしいと願い,『保育職論』として出版した。入学当初の皆さんにとって難解な箇所もあるであろうが,実習を経て卒業し,やがて保育職に就職する折に再度手にとっていただき,保育職への意識・認識の向上のために活用されることを望んでいる。
今後,保育職としての専門性,専門職性をいかに確立していくかは,これから保育職として巣立っていく皆さんの双肩にかかっている。その皆さんが専門職としての自覚と知識・技能を身につけていくにあたって,本書がその一助となれば幸甚である。
2015 年2 月
編著者一同
改訂にあたって
2015 年3 月に本書が発行されて以降,「子ども・子育て支援新制度」が本格的に進められていく中で,その具体的な実施のあり方が明らかになってきた。2017 年3 月には,新しい『保育所保育指針』『幼稚園教育要領』『幼保連携型認定こども園教育・保育要領』が告示され,2019 年度からは新たな教職課程・保育士養成課程が実施となった。
このような保育の場,保育者養成を取り巻く状況の変化を受け,本書においても関係する記述を改め,このたび改訂版を刊行した次第である。
2019 年3 月
編著者一同
目 次
第1章 保育職への道
1 保育職とは 2 保育所の位置づけと職務内容
第2章 要領・指針に示す保育職の役割
1 幼稚園教育要領にみる教師の役割
2 保育所保育指針にみる保育士の役割
3 幼保連携型認定こども園教育・保育要領にみる保育教諭の役割
第3章 保育職の歴史と制度
1 保育と保育職のあゆみ
2 保育職が働く教育・保育施設の制度
3 保育職の資格と要件
第4章 保育職の役割と倫理
1 保育職の役割
2 保育職の倫理
3 守秘義務と情報管理
第5章 保育職の資質と専門性
1 保育とは
2 保育職の専門性
3 計画に基づく保育の実践と省察
第6章 保育職と自己評価・第三者評価
1 自己評価
2 第三者評価
第7章 保育職の協働
1 保育と保護者支援に関わる協働
2 地域型保育との連携
3 職員間の連携
4 専門職間および専門機関との連携
5 保護者および地域社会との協働
第8章 小学校との連携
1 幼保小連携の社会的背景と意義
2 幼保小連携の基本的な考え方
3 幼保小連携の実際
第9章 保育職と研修
1 保育職における研修とは
2 研修の種類
第10章 これからの保育職に求められること
1 保育職としての自覚的な成長
2 生涯発達とキャリア形成
この本をみた方に
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