幼稚園教諭の教職課程において新たに設置された「領域および保育内容の指導法に関する科目」のうち「言葉の指導法」の教科書。さまざまな角度から「言葉」に関する保育実践を具体的に述べる。
内容紹介
まえがき
はじめに
2017(平成29)年3 月に告示された「保育内容『言葉』」の領域では,「幼児が生活の中で,言葉の響きやリズム,新しい言葉や表現などに触れ,これらを使う楽しさを味わえるようにすること。その際,絵本や物語に親しんだり,言葉遊びなどをしたりすることを通して,言葉が豊かになるようにすること」が追加された。ここでは,領域「言葉」の保育の内容を示すとともに,「言葉」の指導法についてもふれている。領域「言葉」の指導法は,幼稚園や保育所等で子どもの資質や能力が生かせる環境を整え,保育者と子どもの主体的で対話的な生活から,より望ましい人格へと育ち・育てられるために,具体的に子どものあるべき姿を想定しながら,保育者が専門性を十分に生かすことが求められる。
2018(平成30)年4 月より施行されている保育所保育指針,幼稚園教育要領,幼保連携型認定こども園教育・保育要領では,「生きる力」の要素として,「知識・技能の基礎」「思考力・判断力・表現力等の基礎」「学びに向かう力・人間性等」をあげている。そして,「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を具体的に10項目示している。ここでの育ちは,「言葉と環境」が大きく影響することはいうまでもなく,子どもを育てる一つの要素としての「領域『言葉』の指導法」は保育者に求められる保育の質と関わってくる。
指導という言葉は,何かを教えるためのカリキュラム構成のイメージが頭に浮かぶ人も一般的には多いかと思うが,乳幼児教育における指導法は,あくまで遊びの中で子どもが言葉を軸とした,その周辺領域を含む力を獲得していくための環境としてとらえなくてはならない。そこで,本書における「領域『言葉』の指導法」は,子どもの「生きる力」を支えるための対話から始まるアクティブ・ラーニングの要素を含んだ保育者の専門性を目指している。
近年の日本社会は,言葉の美しさに感動したり,言葉を綴つづって文章にしたりするなど,言葉を通して,じっくり物事を考えたり,判断したりする機会が減少して,子どもの主体性や協調性,共同性といった姿がみえにくくなってきたように感じている。
本書では,保育所保育指針,幼稚園教育要領,幼保連携型認定こども園教育・保育要領等に準拠しながら,日本の言葉の美しさに感動できる育ちを原点として,乳幼児の発達の道筋と言葉の表現に弱さをもつ子どもの支援,それらの基本に加えて,グローバルな視野で国際社会に対応できる言語理解と指導法,子どもが楽しい体験となる児童文化,地域で語り継がれてきた民話を保育者と子どもが共に創る保育実践の事例,指導案の作成などを盛り込み,子どもが自分の想いを表現できる内容の指導法であることを願ってできたテキストである。
最後に,本書にご協力下さった,保育所や認定こども園の関係者の皆様,共編著者の川北典子先生はじめ共同執筆いただいた先生方,建帛社の編集者の皆様に深く感謝申し上げます。
2019年10月
編者を代表して 大橋 喜美子
目 次
第1章 指導法「言葉」と保育
1.乳幼児の保育において指導法「言葉」はなぜ必要なのか?
2.保育の内容と指導法
3.2018年3法改定(訂)と指導法「言葉」
4.改定(訂)による0歳から3歳までの言葉
第2章 子どもの発達を基盤とした指導法「言葉」
1.0歳児(乳児期)の発達と言葉
2.1歳前後~2歳児(幼児期前期)の発達と言葉
3.3歳児から4歳児の発達と言葉
4.就学前児の発達と言葉
第3章 対話と共感から生まれる保育
1.対話とは何か
2.共感とは何か
3.対話と共感から生まれる保育
4.生活の中での対話と共感
5.遊びの中での対話と共感
第4章 保育教材としての児童文化財
1.言葉と関連の深い保育教材
2.保育教材の工夫と製作
第5章 配慮を必要とする子どもへの支援
1.配慮を必要とする子ども
2.言葉の仕組みと発達
3.支援において考えたいこと
第6章 多文化共生時代における外国にルーツのある子どもへの支援
1.日本における多文化化の現状
2.外国にルーツのある子どもの現状
3.外国にルーツのある子どもの保育を考える
4.オーストラリアの保育実践:五感経験と造形表現による言語支援
第7章 小学校との接続
1.話すこと
2.聞くこと
3.読み書き
第8章 指導法「言葉」と模擬保育
1.指導案の作成
2.保育の実施
3.保育の振り返り
第9章 保育者と子どもが共に創る保育
1.高砂市の民話の取組みの始まり
2.ふるさとの愛につつまれて豊の心を育む
3.北浜こども園の取組み
4.おわりに
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