平成28年9月1日
食品成分表の分析法
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門アドバイザー 安井 明美この著者の書いた書籍
日本食品標準成分表の改訂に当たっては,その時点で最適と考えられる前処理法・測定法を採用して,基礎データを収集している。
分析値は,食品成分表の収載値の基になる情報であるので,信頼できる分析法の採用と分析値の信頼性確保は必須となる。食品分析は,対象食品,対象成分および測定法の組み合わせで実施され,方法の妥当性確認が要求される。分析法の妥当性確認は,試験室間共同試験によるものが最も信頼性が高いが,単一試験室によるものも有効である。食品成分表の作製において,新規成分の測定に当たっては,分析を依頼する機関に,使用する測定法について,食品群ごとに代表的なマトリックスの食品を選定して,単一試験室による妥当性確認または検証として,繰り返し分析(7回)による併行(あるいは中間)精度,定量限界,検出限界,検量線の直線範囲(定量に検量線法を用いる場合)および添加回収試験の実施と結果の報告,内部質管理と参加した技能試験の結果報告を要求している。
2015年12月に『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』,『同・アミノ酸成分表編』,『同・脂肪酸成分表編』および新たに『同・炭水化物成分表編』が公表され,『炭水化物成分表編』には,新たに測定された「利用可能炭水化物」,「糖アルコール」および「有機酸」が収載された。
これに伴い,これらの測定法について,従来の分析マニュアル,『日本食品標準成分表2010』および『日本食品標準成分表準拠アミノ酸成分表2010』に収載の分析法に加筆・修正を行い,さらに同等の分析性能を有する方法(全窒素定量法の燃焼法,ミネラル分析の誘導結合プラズマ発光分析法等)を追加してまとめたものを,食品成分委員会資料『日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル』として公表した。測定法の概要は『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』の第一章に掲載されている。
食品の成分測定では,試料のはかりとり時に水分測定も並行して行っている。水分が異なれば,乾質量当たりの成分量は異なってくるので,成分表では,複数の測定値は乾質量当たりに換算したうえで平均値を求め,収載する水分値で換算し直す作業を行っている。
また,文部科学省資源室では,信頼できるデータの収集のために,業界団体等から分析データ付きで収載依頼があった場合の受け入れ条件をホームページで紹介している。
なお,分析法は機器分析の進展に伴って日進月歩であり,利用者にあっては,コーデックス食品委員会のクライテリア・アプローチの考え方で,マニュアルに記載の方法と比較して同等以上の性能をもつ(同様の信頼性のあるデータを出せる)方法を使用することも可能である。クライテリア・アプローチとは,「分析法の選択性,精度,真度(回収率),定量限界,検出限界,検量線の直線性など,設定した一定の性能基準(クライテリア)を満たすことが確認された方法であれば分析者が選択して使用できる」ことを意味している。
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