管理栄養士国家試験ガイドライン,日本人の食事摂取基準(2020年版)など変遷を汲む三訂版。カウンセリング技法,行動科学理論など栄養教育の最前線動向を網羅。
内容紹介
まえがき
は じ め に
21 世紀になって10 年という節目を迎え,社会・経済・環境はめまぐるしい変化の様相を呈してきた。人の日々の営みも“チェンジ”,多様化,個別化,合理化している。栄養・健康状況は,過剰栄養と低栄養,さらに崩食とよばれる状況もみられるようになってきた。食生活・栄養・健康施策においても,栄養教諭制度創設,食育基本法公布,介護保険法改正,診療報酬改定など大きな変革をみてきた。
栄養教育は,食生活管理の面から人々の健康づくりを担う健康教育の一環である。なかでも生活習慣病予防は,栄養教育の健康対策に重要なものとなってきている。
平成14 年改正の新カリキュラムにおいて栄養教育は,行動科学理論と教育学の基礎を踏まえ,カウンセリング論に基づき実施することが望ましいとし,「栄養指導論」から「栄養教育論」へと改称されてきた。
そこでこの『マスター栄養教育論』は,食行動に焦点をあてた行動科学と教育学の理論の統合により,健康的な食行動を形成し,健康の保持・増進とQOL の向上を目標とする栄養教育の方法論を理解し,人々がいきいきと生涯を送れるよう食生活管理,栄養教育を担う専門家として,管理栄養士・栄養士がさまざまな栄養教育の場において実践・応用して活躍できるようにと願って概説した。つまり,栄養士法や健康増進法など各法令・制度の理解をもって“栄養教育マネジメントから栄養教育活動”へと発展させて学習できるようにすることをねらいとしている。その点において,積み上げてきた具体的な事例を用いて,栄養教育の方法論を提示している。栄養教育マネジメントの実際が展開できる専門職の養成と,またリカレント教育として,本書の学びが科学的に栄養教育活動を進めていくための一助となれば幸いである。
平成22 年末に管理栄養士国家試験の新ガイドラインが公表されたことを受け,本書においてもできるかぎり新ガイドラインに沿う内容に構成することにつとめた。管理栄養士・栄養士養成校で修得すべき知識を得ることはもちろん,管理栄養士国家試験受験の勉学にも十分な内容を含んでいるものと考える。
さらに,本書編集中の平成23 年3 月には日本史上最大級の天災「東日本大震災」に見舞われ,東北地方を中心に甚大な被害をもたらせた。この緊迫した環境下において管理栄養士としても何らかの栄養サポートができればと思うものである。
読者諸氏,諸先輩のご批判,ご助言をいただければ幸甚である。
最後に,本書刊行の機会をくださり,また編集作業に多大な労をとっていただきました建帛社筑紫和男氏はじめ皆様には大変お世話になり,厚くお礼を申し上げます。
2011 年3 月
執筆者を代表して 逸見 幾代
三訂にあたって
平成23(2011)年の初版刊行以来,改訂を重ね,10 年目の節目にあたる令和2(2020)年に「三訂版」を刊行する運びとなった。
前回の「改訂版」(平成27(2015)年刊)から,管理栄養士の専門業務に関する法令・通知・資料等の改定,管理栄養士国家試験ガイドラインの改定,そして「管理栄養士・栄養士養成のための栄養学教育モデル・コア・カリキュラム」がまとめられ,管理栄養士・栄養士の養成と,栄養学を基盤とした実践活動を担う人材養成の方向性・姿が示された。さらに令和元(2019)年には「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」の公表がなされ,これを機に三訂版へと歩むこととなった。
三訂版にあたって主な改訂内容としては,先述の通り,本書が前回改訂した平成27(2015)年以降の栄養教育論における変遷を汲み,「日本人の食事摂取基準(2020年版)」,「授乳・離乳の支援ガイド(2019 年改定版)」ほか法規の改正など,全編を通して関連記述を見直した。さらに,平成31(2019)年に改定された「管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)」を考慮し,関連する内容を注視した。執筆にあたっては,最新の内容を精選するとともに,対応すべき内容を網羅し,可能な限り事例を用いて概説するように努めた。
執筆者一同,本書の特徴である「実践につながる理論」を目指し,学習が進められる教科書となるよう,またリカレント教育にも,さらには大学院研究科の研究教育にも役立つことを願って執筆,刊行を迎えることができた。
管理栄養士・栄養士養成校のテキストとして,ご活用いただけることを心より祈念します。
最後に,三訂版刊行の機会をいただき,終始改訂過程にご尽力・ご支援賜りました建帛社代表取締役社長 筑紫和男氏はじめ,編集の方々に厚く感謝申し上げます。
令和2(2020)年4 月
編著者 逸見 幾代
佐藤 香苗
目 次
第1章 栄養教育の概念
1 栄養教育の定義・目的
2 栄養指導・栄養教育の歴史
第2章 栄養教育のための理論的基礎
1 行動科学の理論とモデル
2 栄養カウンセリング
3 行動技法と概念
4 組織づくり・地域づくりへの展開
第3章 栄養教育マネジメント
1 栄養教育マネジメントで用いる理論やモデル
2 健康・食物摂取に影響をおよぼす要因のアセスメント
3 栄養教育の目標設定
4 栄養教育計画の立案
5 栄養教育のプログラムの実施
6 栄養教育の評価
第4章 理論や技法を応用したライフステージ別栄養教育の展開
1 ライフステージ区分による対象
2 妊娠期・授乳期の特徴を踏まえた栄養教育
3 乳幼児期の特徴を踏まえた栄養教育
4 学童期・思春期の特徴を踏まえた栄養教育
5 成人期の特徴を踏まえた栄養教育
6 高齢期の特徴を踏まえた栄養教育
7 疾病者および障がい者の特徴を踏まえた栄養教育
この本をみた方に
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