建帛社だより「土筆」

令和5年1月1日

食品分析値の信頼性確保

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構食品研究部門アドバイザー 安井明美この著者の書いた書籍

 際食品規格の策定等を行っている政府間機関,コーデックス食品委員会の「食品の輸出入の規制にかかわる試験所の能力評価に関するガイドライン(CAC/GL27―1997)」には,試験所に採用されるべき質規準として,妥当性確認された分析方法を用いていること,内部質管理を行っていること,適切な技能試験に参加していること,そして,ISO/IEC 17025「試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項」に適合していることをあげている。これらは,分析値を報告する試験所にも同様に要求される。

 析法の妥当性確認(method validation)とは,試験に用いる分析法が意図する特定の用途に対して,個々の要求事項が満たされていることを調査によって確認し,客観的な証拠を用意することである(JIS Q17025:2005)。妥当性確認された方法は,規制・規格の分野では,一定の技能をもった人が,その分析法を使用した際に,同試料であれば分析値がある幅の中に収まることが要求され,同試料を同じ方法で分析したにもかかわらず,分析者(分析機関)によって分析値がある幅以上にばらつくような方法は規制・規格の分野では使用できないことを意味する。

 部科学省の「日本食品標準成分表」の作成に用いられる分析法は,分析依頼機関に使用する測定法について,食品群ごとに代表的なマトリックスの食品を選定する。単一試験所による妥当性確認または検証として,繰返し分析による併行(あるいは中間)精度,定量限界,検出限界,検量線の直線範囲・添加回収試験の実施と結果の報告,内部質管理と参加した技能試験の結果報告を要求している。

 本農林規格(JAS)では,国際ハーモナイズドプロトコルにおける試験室間共同試験による分析法の妥当性確認が,独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)によって行われている。室間共同試験による分析法の性能特性評価においては,繰返し精度だけではなくて,室間再現精度を明らかにしておくことが重要で,均質性が確認された試験試料群が複数の分析試験所に配付され,各分析試験所は決められた分析手順書に従って分析し,報告する。有効な試験所数は,定量分析では,通常8カ所以上,材料数は通常最低五種類となっている。

 AMICのホームページには「JASに係る測定方法の妥当性確認試験」として,畜産物缶詰及び畜産物瓶詰等の二十八規格品目の試験項目と測定方法が掲載されている。内容として,粗たん白質・全窒素分はケルダール法と燃焼法,水分は常圧乾燥減量法と減圧乾燥減量法,塩分はモール法と電位差滴定法,粗脂肪はソックスレー法,糖分・糖類はHPLC法,酸度は中和滴定法,灰分は燃焼灰化法,エタノール分は蒸溜滴定法とGC法等があり,室間共同試験による結果も示されているため(2022年10月11日確認),これらの方法を使用される方には参考となる。 

目 次

第117号令和5年1月1日

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