建帛社だより「土筆」

令和5年1月1日

読書が育くむもの(社長年頭の辞)

あけましておめでとうございます

本年も宜しくお願い申し上げます

 年も新型コロナウイルス感染症の影響が残りましたが,多くの学会で学術大会が現地開催されました。主に,ハイブリッド開催で,現地の参加者は通常開催の3分の1~4分の1程度ではありましたが,久しぶりに先生方とお会いして対面でお話を伺うことができました。伺う中では,多くの教育機関で新学期から原則として対面授業に戻しているようでした。一方で,オンライン授業の利便性も顕在しており,今後もなくなることはないと感じています。

 社ではこの2年間は学校訪問を控えておりましたが,先述のような状況を受けて,昨年より訪問を再開させていただきました。貴重なお時間を割いて,ご面会いただきました先生方にはこの場を借りて御礼申し上げます。

 までの紙媒体の教科書・専門書に加えて,専門教育に寄与できるオンライン向け教材・サービスを提供できるよう研鑽してまいりますので,忌憚ないご指導・ご鞭撻を賜れれば幸いです。

 生方のお話には,「学生が教科書を読んでこない」「文字が多い教科書だと開きもしない」等のご意見が多く,改めて読書離れが進行している現状を認識しました。

 立青少年教育振興機構が実施している「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究」によると,1か月の読書量を「0冊」と回答した人の割合は平成25年からの5年間で,20代では25.1ポイント増加して52.3%となっていました。通勤・通学電車でほとんどの人がスマートフォンを見ており,ゲームをしているかSNSをしているか,という状態が日常的なものになっていることは皆様も感じているところかと思います。SNSでは20文字程度のごく短文の場合が多く,専門書のようなまとまった文章を落ち着いて読み解くという行為に耐えられない現状が,読書離れに拍車をかけています。また,前述の調査では,小中高を通して読書量が多い人は,そうでない人よりも認知機能が高い傾向にある,という結果も示していました。

 学校の幼い時期に読書を習慣にすることで,文字に慣れるということもありますが,他からの干渉を排除して本と向き合う時間をもつことで集中して取り組む力が涵養されます。小学校では「朝読活動」など読書機会を増やす様々な取り組みが根づいてきており,子どもが本に触れるきっかけが増えてきているように感じます。

 本書籍出版協会では児童書フェアの展開や学生ビブリオバトル全国大会を後援するなど,若年層が本に触れる楽しみを後押しできるよう活動しています。昨年の11月1日「本の日」を中心とした秋の読書推進月間では「本を読む人は美しい」をテーマに様々なイベントが開催されました。専門教育の領域では,高い専門性とエビデンスに裏づけられた間違いのない知識が必要となってきます。当社の書籍を選んでいただいた方に,洗練された文章で知識を習得いただけるよう,確かな内容で出版できるよう努めてまいります。

目 次

第117号令和5年1月1日

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