建帛社だより「土筆」

令和4年9月1日

管理栄養士養成校のアメリカ西海岸研修旅行

聖徳大学教授 日本食生活学会副会長 佐々木弘子この著者の書いた書籍

者が所属する聖徳大学の人間栄養学科では,2年生の2月に8泊10日でアメリカ(米国)西海岸研修旅行を行います。管理栄養士のたまごが,医療職としてスタートした米国の登録栄養士(Registered Dietitian;RD)の活躍から学ぶものです。また,多民族国家である米国が日本とはまったく異なる社会であることを体験し,いろいろなことにカルチャーショックを受けながら,自己の世界を広げていくことになります。

「見る」「聞く」「知る」の体験として,(一)米国全土ですすんでいる肥満,心疾患などの背景に食生活の問題点があることを実地で体験学習し,米国の栄養問題を把握することによって,我が国の栄養問題に対する気づきや関心を高めます。(二)米国の食生活上の問題点は,便利な車社会をつくりあげた大量生産,大量加工,大量流通,大量消費を背景とした日常生活の中から生じているとも考えられ,その日常生活を体験するために,①大量生産現場:有機農法を基本とした生産へと転換しつつある市場と大規模有機農場の見学,②大量加工工場:原材料にどのような処理を施して大量の加工食品ができあがるのか,そのシステムを見学,③大型スーパーマーケット:現地の人が選択する食品にはどのようなものが多いのか,どれだけ大規模で販売しているのか,自己責任が問われる大量販売の市場を実感,④大規模食事サービス:どのような調理品を,どれだけの量,選択・摂取しているのかを視察,⑤街中を自由散策し,肥満者が多い一方で,体重管理をしっかりと行っていそうなスレンディーな人とも出会うなど,「自由の国」の文化や人柄を実感します。

らに,(三)現地勤務のRDの方々による講演「RD取得のシステム,病院での役割,仕事内容等」,「RDとして働くための道のり・意義」などを聞き,管理栄養士の仕事のスケールに憧れを抱きます。(四)大学の給食施設,一日の食数が多い美術館の食堂の運営方針や食事サービスの話を聞き,様々な国の出身者と一緒に食事をし,食事に対する考え方,料理の選び方などに興味津々となります。

理栄養士という資格をキーワードとして,食にかかわる施設で働く人々の姿とおおらかな人間性,米国の雄大な自然と風土・文化に触れることで,学生たちの心に自我が目覚めます。短期間ではありますが,現地関係者,大学関係者の方々のサポートにより,密度の濃い時間を過ごし,学生は,英語力があればよかったとの悔しさがあるものの満足感一杯の笑顔で帰国します。この研修旅行は,学生たちの将来によい影響を与えていることは確かなようです。

て話は変わりますが,筆者が副会長を務める日本食生活学会(https://jisdh.jp)について,この紙面を借りて紹介させていただきます。日本食生活学会は様々な角度から食,栄養,生活を俯瞰的に考えることができる学会です。創立30周年を超えさらなる発展をめざしています。多くの方々に参加いただき躍動感あふれるものになることを期待しています。 

目 次

第116号令和4年9月1日

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