建帛社だより「土筆」

令和4年9月1日

コラム:コロナ下の出版界

版科学研究所によると新型コロナウイルス感染症のパンデミックとなった2020年および2021年の日本の出版物の推定販売額は,前年を上回る結果となった。年々販売額を伸ばしている電子出版を含めても,雑誌の売り上げ減が著しく,出版物全体の売り上げは減少を続けていただけに,コロナ下の「巣ごもり需要」があったと考えられる。

021年の内訳でみると,電子出版が27.8%,紙の出版が72.2%である。さらに詳しくみていくと,紙の出版の内訳は,書籍が40.6%,雑誌が20.5%,コミックが11.0%となっている。電子出版は,電子コミックが全体の24.6%と出版の約4分の1,電子出版の内の9割弱を占めており,電子+紙のコミックが出版市場全体のシェア4割を超えている。その売り上げ増が全体を押し上げていることは間違いないところであるが,一方で,コミック,雑誌を除いた紙の書籍のみの売り上げも増加に転じた(ちなみに雑誌の売り上げはコロナ下にあっても大幅に減少を続ける結果となっている)。

ロナ前の2019年の紙の書籍全体の販売額は6,723億円で,それに対しコロナ下の2020年は6,661億円,2021年は6,804億円であった。20年は前年をやや下回る結果であったが,21年は19年の101.2%である。紙の書籍の売り上げが前年を上回るのは,2006年以来,15年ぶりのことであった。

版科学研究所は「児童書や学習参考書などの伸長に加え,返品率の改善,価格の上昇」がその要因であると分析している。少子化が進行する中にあって,児童書や学習参考書は毎年手堅く売れている。特に児童書にあっては,ベストセラーとなって大部数を販売するヒット商品が,ここ数年相次いでいることは大きい。

て,このような中,弊社も賛助会員である,出版文化産業振興財団(JPIC)をはじめとして,読書推進運動協議会,日本図書普及,本の日実行委員会の四者合同主催により,「秋の読書推進月間」が来月末から開始される。これは,業界を横断した新たな出版界の取り組みである。

れまでにも行われていた,10月27日の「文字・活字文化の日」にはじまる「読書週間」から11月1日「本の日」を経て,11月30日「絵本の日」に至るまでを「秋の読書推進月間」として位置づけるものである。「本を読む人は美しい」というテーマを掲げて,各種イベントやプロモーションを展開する。

非,書店に足を運んでいただきたい。

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第116号令和4年9月1日

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