建帛社だより「土筆」

令和4年9月1日

今こそ,学校現場に「折れない心」の育成を!

奈良学園大学教授 住本克彦この著者の書いた書籍

「生き抜く力」,「やり抜く力」,「折れない力」等,いま,教育現場での「心の教育」の実践において,「折れない心」をいかに育てるかが注目されている。

者は長く生徒指導,教育相談にかかわり,「心の教育」に関する研究も重ねてきた。そのような中で「折れない心」の育成には,次の10項目が大きく影響していると考えている。

(一)揺るぎない自信をもっている:揺るぎない自信をもった人は,外からの衝撃にも強い。教師自身がこの揺るぎない自信をもって児童生徒に向き合うと,その言動には説得力が生まれる。(二)揺るぎない自信をもっている人をイメージできる:揺るぎない自信をもっている人を具体的にイメージできると,自分で心から納得でき,「自分の思いを大切にしてやってきたのだから,何とかなるさ!」と楽観視することもできる。(三)勝ち負けにこだわらない:「勝ち」ももちろん尊いことではあるが,「折れない心」をもつためには,「一等賞より尊いビリだってある!」ということを実感できることが大切である。(四)プラス思考で物事をとらえることができる:プラス思考というのは,何事においても,よい方向に考えが向くことである。この思考を育てるには,リフレーミング技法が効果的である。(五)いまの自分が好きである(自尊感情):自尊感情とは,「いまの自分が好き!」と実感できることである。その要素として,「自己効力感」,「自己有能感」,「自己有用感」がある。(六)感情のコントロールができる:感情のコントロールができる人は,自分自身のいまの感情をうまく表現できる。自身の感情の現況がわかれば,その対処法も明確になる。(七)受け止めてくれる人をもっている:自分を受け止めてくれる人,信じることができる人をもっていることである。「あの人に話を聞いてもらったら元気になる」そういう自分自身にとってのキーパーソンがいるかどうかである。(八)中立を保ち,自己防衛ができている:まず,他人にむやみに迎合せず,中立を保てるということ。次に,自己防衛ができており,自分自身の限界もしっかり把握できている。(九)完璧をめざしすぎない:完璧を求めれば求めるほど,完璧ではない自分のことが嫌になってくる。自分自身の不完全さを受容することで,心は安定し,いまの自分自身を受け入れることができる。(十)没頭できるもの(趣味など)がある:心が折れない人は,心のエネルギーを十分にもっている。この心のエネルギーを満たすには,既述したように,受け止めてくれる人をもつことと,好きなこと(趣味)に没頭できるものをもつことである。

況のコロナ禍も踏まえ,一層の「折れない心」の育成が求められる。その際,まずは教師自身がこの「折れない心」をもっていることが重要な要素となることを付記し,本稿を閉じたい。

目 次

第116号令和4年9月1日

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