建帛社だより「土筆」

令和5年9月1日

日本LD学会プロジェクト 「発達障害の専門性の保障」

一般社団法人日本LD学会事務局長 U&U教育相談室代表 内田真弓この著者の書いた書籍

 般社団法人日本LD学会は,1992年「日本LD研究会」として設立し,1993年「日本LD学会」として名称を変更,2009年に法人化され現在に至っています。定款の第三条では,「この法人は,LD(Learning Disabilities:学習障害,以下略称をLDとする)及びその関連領域に関する科学的研究等を行い,LD等を有する児(者)に対する教育の質的向上と福祉の増進を図ることを目的とする。」と書かれています。2023年4月現在,約12,000人の会員数です。

 年度から,日本LD学会では,学会プロジェクトとして「通常の学校における発達障害の専門性の保障プロジェクト」を立ちあげました。

 景として,次の三つがあげられます。

 一.2022年12月に報告された文部科学省の調査報告から,通常の学級に8.8%もの児童生徒が特別な支援が必要な可能性があることが明らかになった。

 二.国際連合障害者の権利に関する委員会において,「通常教育の教員の障害者を包容する教育(インクルーシブ教育)に関する技術の欠如及び否定的な態度」が指摘されている。

 三.現場における課題として,通級による指導や特別支援学級における指導が行われているが,教員が多様な個性や障害のある子どもたちをアセスメントして指導を行うための専門性を高めて行くことが必要。

 のプロジェクトの目標は,通常の学校における特別支援教育に関する免許の創設です。これは,通級による指導や特別支援学級の指導の充実と,通常の学級における質の高いインクルーシブ教育の構築をめざすことにつながると考えます。

 らに今年度は,①大学における特別支援に関する教員養成実態調査,②文部科学省の調査報告を受けての解釈,③研究大会のなかでの学会企画シンポジウムの開催,④教員養成等に関する海外の情報収集,に取り組んでいます。

 自身,小学校の特別支援学級の教員として,多くの子どもたちの指導に携わってきました。そこでは,通常の学校での特別支援教育における専門性が必要と強く感じていました。そして日本LD学会の出会いが,まさに多様な個性や障害のある子どもたちをアセスメントし,計画・実践・反省を行う力をつけるための研修のひとつとして大切な場でした。また,機関誌「LD研究」をはじめ多くの書物や研修会で,新しい研究,海外の情報を得ることができました。

 別支援学校の指導対象となる子どもたちは一人一人ちがい,同じ障害の診断を受けていてもそれぞれ異なります。

 様な子どものニーズにこたえられる教員となるためにも,通常の学校での指導(学習指導要領等)と特別支援学校での指導(学習指導要領・特に自立活動の指導)の両方が理解でき,実践できる教員が必要と考えます。

 こ数年コロナ禍で,教育現場の指導方法や,研修会のあり方等,いろいろ変化してきています。遥か昔ではありますが,大学3年生のとき,週一回の病院実習で小児病棟の子どもたちと過ごした経験,さらには修士課程で,現場で対応できる教員の養成をめざして,月1回障害者施設や特別支援学校への見学の機会を与えてもらっていたこと。これらは,教員生活をスタートするにあたって自信につながったと考えています。また,日本LD学会をはじめ,多くの研修会へ参加し,そこで出会った講師の方や仲間たちが,その後の教員生活を支えてくれたと感じています。

「通常の学校における発達障害の専門性の保障プロジェクト」をすすめることで,発達障害の子どもたちをはじめ特別な支援を必要とする子どもたちへのよりよい支援が行える教員が増えていくことを期待したいと思います。

 のことが通常教育の教員の障害者を包容する教育(インクルーシブ教育)に関する技術の向上につながると考えます。

目 次

第118号令和5年9月1日

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