建帛社だより「土筆」

令和5年9月1日

健康日本21(第三次)とPDCAサイクル

国立保健医療科学院生涯健康研究部長 横山徹爾この著者の書いた書籍

 が国では国民の健康づくりを進めるための基本的な方向性として,1978年度に「第一次国民健康づくり対策」が示されて以来,ほぼ10年ごとにその改正が行われてきた。

 000年度からは第三次国民健康づくり対策に相当する「二十一世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」が開始され,生活習慣病およびその背景としての生活習慣の改善等の課題について具体的な数値目標を設定した。国や地方公共団体等の行政だけでなく,広く関係団体等の積極的な参加と協力を得ながら,国民が主体的に取り組める新たな健康づくり運動を推進することとなった。

 013年度からの「健康日本21(第二次)」(以下,「第二次」)では健康寿命の延伸と健康格差の縮小を上位目標とし,その達成のために,生活習慣病の予防,社会生活を営むために必要な機能の維持および向上,社会環境の整備,生活習慣および社会環境の改善を柱とした取り組みが行われており,現在はその最終年度である。そして,2024年度からは「健康日本21(第三次)」(以下,「第三次」)が開始される。

 年の健康施策はPDCAサイクル(Plan ― 計画,Do ― 実行,Check ― 評価,Action ― 改善)の考えに沿って進められている。「健康日本21」以降は,健康指標等に関する数値目標の達成度や,具体的な取り組みについての質的情報を勘案して,計画期間の中間および最終時点において評価・見直しが行われてきた。

 022年度に公表された「第二次」の最終評価は,㈠目標に対する実績値の評価(数値評価),㈡諸活動の成果の評価(主に質的評価),㈢二十一世紀の健康づくり運動全体としての評価と次期国民健康づくり運動プランに向けての課題の整理,の三点について行われた。㈠の数値評価の結果は,「A・目標値に達した」8項目,「B・現時点で目標値に達していないが,改善傾向にある」20項目,「C・変わらない」14項目,「D・悪化している」4項目,「E・評価困難」7項目であった。各目標の達成状況に関連して㈡の諸活動の成果についても評価を行い,㈢の課題として整理し,これらを踏まえて「第三次」は策定されたのである。

「第三次」では,「一,健康寿命の延伸と健康格差の縮小」,「二,個人の行動と健康状態の改善」,「三,社会環境の質の向上」,「四,ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり」を四つの基本的な方向性とする。そして,「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」を「ビジョン」とし,そのために,「誰一人取り残さない健康づくりの展開(Inclusion)」と「実効性をもつ取組の推進(Implementation)」を行うことを強調している。

 らに今後,地方公共団体の取り組みに資するよう,具体的な方策(アクションプラン)等の策定にも取り組み,公表していく予定である。

目 次

第118号令和5年9月1日

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