建帛社だより「土筆」

令和6年1月1日

言語聴覚士養成教育における臨床実習の在り方

多摩リハビリテーション学院専門学校 鈴木真生この著者の書いた書籍

 者は教員として,言語聴覚士養成施設で言語聴覚士を志す学生の教育に携わっている。学生は言語聴覚士になるために必要な,多くの知識や技能を修得する。そのなかでも,学修の集大成ともいえるのが臨床実習である。机上で学修した知識や技能は,すぐに臨床で活用することはできない。活用するためには,その運用方法を学ぶ必要がある。これが,臨床実習が実学教育といわれる理由であり,意義でもある。


 今,臨床実習の在り方が少しずつ変化しているが,これは社会的情勢を踏まえたものであり,臨床実習で学ぶべき根幹は変わっていないと思われる。


 の根幹とは,「臨床思考力」と「臨床推論力(思考プロセス能力)」である。この2つが臨床の場でいかに重要かを,実学教育を通して学修するために学生を実習施設へ送り出しているといっても過言ではない。


 前は,学生が臨床思考力と臨床推論力の重要性を理解したうえで,臨床実習を経験することが必要だと考えていた。学生の理解を促すために試行錯誤を続けていたが,学校教育で伝えられることに限界があると感じるようになった。


 のようななか,実習中に患者・児にかかわらせていただいて多くのことを考え,悩み,迷っている学生をみて,この経験を通して臨床思考力と臨床推論力の重要性を学んでいることに気がついた。さらに,間近で臨床家の臨床思考過程や臨床推論の考え方を学ぶことも学修効果の向上に大きく影響していると感じた。


 れ以降,学校教育ではこの2つの重要性を知識として伝え,実学教育で実際的な運用方法を学ぶというつながりを大切にするようになった。つまり,臨床実習において,学校教育と実学教育はどちらが欠けても十分な教育には至らず,双方がそれぞれの役割を果たすことで成り立つということである。


 語聴覚士を取り巻く環境の変化に対応し,質の高い言語聴覚士を養成するために,厚生労働省は「言語聴覚士学校養成所カリキュラム等改善検討会」において議論を重ね,令和5年9月19日に「言語聴覚士学校養成所カリキュラム等改善検討会報告書」をまとめている。


 の中では,臨床実習の在り方について検討されており,実習の内容や時間数,実習指導者の要件等,様々に議論が重ねられていた。このことより,臨床実習の在り方は大きく変化するだろう。

 かし,根幹である臨床思考力と臨床推論力を身につけることは,変わらないと思っている。それは,この二つは臨床家にとっても不可欠な能力だからである。


 からこそ,実学教育に携わる臨床家はこれらの根幹が言語聴覚士にも求められていることを念頭に置いていただきたい。そして,臨床実践を通して実際の運用方法を学生に伝えることを忘れないでほしい。


 後も,臨床思考力と臨床推論力の二つの根幹は,臨床実習において重要であることを伝え続けることが私たち教員の大きな使命だと考えている。

目 次

第119号令和6年1月1日

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