建帛社だより「土筆」

令和6年1月1日

「FFQ NEXT」を活用した公衆栄養学実習

神奈川県立保健福祉大学准教授 遠又靖丈この著者の書いた書籍

 理栄養士・栄養士の業務では表データが多用される。また近年では,栄養疫学の研究ではもちろんのこと,市町村が実態把握のために独自に大規模な食事調査を実施する例もめずらしくない。管理栄養士・栄養士をめざす学生は,こうした食事調査のデータを活用した分析を行えることが重要である。


 者の大学では,公衆栄養学の授業において,実際の調査でも用いることの多い食物摂取頻度調査法(FFQ)を教材にしている。具体的には,建帛社より発売されている栄養計算ソフト「栄養プラス」の付属ソフト「FFQ NEXT」を用いている。


 とえば,がん罹患にどのような食事内容が関連するかを研究するには,一般的に数万人以上の大規模コホートデータが必要とされる。FFQ NEXTには,国立がん研究センターが10万人以上を対象に実施している「次世代多目的コホート研究(JPHC―NEXT)」で使用している調査票から,食習慣やFFQに関する部分を抜粋したものが搭載されている。これは,過去の食事内容を摂取頻度やポーションサイズとして自己申告で得た情報から摂取量を計算しているため,摂取したものをすべて秤量する食事記録法に比べると簡便ではあるが,一定期間の摂取量を把握する精度は高くないと考えられている。そのため,実際にFFQデータを用いる前に,どの程度の精度であるのか妥当性を確認できるようにする必要がある。そこで実習授業では,前半にFFQの妥当性の検証,後半にFFQデータを総合的に駆使する食事パターン作成・評価の課題を実施している。


 当性の検証では,FFQ NEXTの食品群別摂取量のデータが外的指標(食事記録法など)と,どの程度相関するかを評価する。FFQ NEXTの質問票の妥当性については,すでに東日本五地域の40~74歳の対象者で検証した報告があるものの,学生の場合は,その対象とは特性が異なるため,若年成人という集団にあわせて確認することも重要である(と学生に解説している)。


 半の食事パターンの課題では,FFQ NEXTのデータをもとに,栄養素等摂取量や健康状態のよし悪しにかかわるだろうと考えられる任意の食事パターンのスコア(例:日本人の健康長寿に寄与すると考えられる日本食のスコア)を学生に考案してもらい,栄養素等摂取との関連を分析する。最終的に,得られた成果を報告資料にまとめ,発表とディスカッションを行う。前半の妥当性の検証結果を踏まえてデータの精度を気にしながら,栄養素等摂取量のよし悪しを把握し,作成したスコアの欠点を補うための考察を行う。


 こで紹介した実習の詳細は,今般建帛社より上梓される『公衆栄養学・栄養疫学実習』に収載されている。情報収集~データハンドリング~分析~解釈という一連の作業を行え,データに基づく評価ができる人材を育成する一助となれば幸いである。

目 次

第119号令和6年1月1日

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