令和6年9月1日
将来社会を見据えた高等教育の在り方について(コラム)
18歳人口は1992年の205万人をピークに,2024年は106万人と急速に少子化が進行している。今後,2035年に100万人を割り込み約96万人に,さらに2040年には約82万人にまで減るとの予測もある。また,2018年以前は少子化の反面,大学進学率の上昇により,大学進学者数も増えていた。しかし,2018年以降は進学率が上昇しても進学者数は減少の局面に入っているという。2023年度では,全国の私立大学の約53パーセントが定員割れしており、特に地方の中小規模の私立大学では,学生募集に苦戦している。
近年の高等教育を取り巻く状況がきびしさを増す中,中央教育審議会(高等教育の在り方に関する特別部会)より「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について(中間まとめ案)」が公表された。
ここでは,近い将来である2040年には,中間的な規模の大学1年間で90校程度減少していくと予想している。また,定員割れや募集停止,経営破綻する高等教育機関が増加していくことは避けられない状況にあり,特に地方では学習意欲のある若者の高等教育へのアクセスが閉ざされる可能性も指摘されている。
高等教育の在り方は,これまでのマインドを改めていく必要に迫られているが,中間まとめ案では今後の高等教育のめざすべき姿を「知の総和を維持・向上させていくことが必須である」と提言している。
知の総和とは,人の数にそれぞれの人がもつ能力を掛け合わせたものである。少子化により数が減少しても,教育のデジタル化の推進等により学生一人ひとりの能力を最大限高めて補う,ということであろう。
高等教育機関は,知の総和の維持・向上に中心的な役割を果たしていくとされる。さらに、知の総和の維持・向上のために,高等教育政策の基本的・具体的方策として「質」「規模」「アクセス」の3点が示されている。
「質」とは,今まで以上に教育研究の質を高めていく取り組みを指す。教育内容の明確化,学修の成果が重要な要素となる。また留学生等,多様な人材と学び合う環境を整えることも重要である。
「規模」とは,定員割れ等で教育研究が質の低下に陥らないよう,高等教育機関の規模を適正化していく試みである。
「アクセス」とは,住んでいる場所や世帯年収で学びの可能性が閉ざされないよう,地理的・社会経済的な観点から高等教育の機会均等を実現していく。
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