令和7年1月1日
栄養学・食糧科学の発展を担う日本栄養・食糧学会の活動
公益社団法人日本栄養・食糧学会代表理事・会長 武庫川女子大学教授 芦田 均この著者の書いた書籍
日本栄養・食糧学会(以降,本学会)は,栄養学と食糧科学の進歩をはかり,国民栄養の向上に寄与することを目的に,1947年に設立。戦後の栄養事情を鑑みて,1951年に日本医学会総会に参加して以来,日本医学会第14分科会として,栄養学・食糧科学を医学的観点からとらえて,国民の健康維持や健康寿命の延伸に資する情報の発信をしてきました。
本学会は2022年に創立75周年を迎え,同年6月に神戸で行われた第76回大会の際に記念式典と記念祝賀会が開催されました。記念式典では関連学会(日本栄養改善学会,日本糖尿病学会,日本動脈硬化学会,日本ビタミン学会,日本農芸化学会)のご代表から,記念祝賀会では当時の日本医学会会長 故 門田守人先生も駆けつけてくださり,ご祝辞を賜りました。また,本学会創立75周年記念として2023年12月に『栄養・食糧学が拓く未来のために―学会の歩んだ軌跡と会員からのメッセージ―』が建帛社から上梓されました。ここには50周年以降,四半世紀の記録や会員からのエッセイが記載されています。会員以外の皆様におかれましても,これまでの栄養学・食糧科学の進展を知るうえで貴重な資料となっていますので,お手に取ってご覧いただけますれば幸甚です。
さて,私は吉田博前会長の後を継ぎ,2024年5月の第78回大会の総会において本学会代表理事・会長を拝命いたしました。今後は創立百年までの次の四半世紀,ひいてはその先の未来を見据えた基盤構築を行っていく所存です。
また,本学会は「栄養学の学術としての質を高め,その成果をもって,少子超高齢化が進展する日本社会において,人々の健康寿命の延伸および生活の質の向上に寄与すること」を目的として設立され,栄養学にかかわる十六の学術団体からなる日本栄養学学術連合の世話人をしています。したがって,本学会は日本の栄養学の発展を担ううえで中核となる学術団体として,栄養学・食糧科学の発展に寄与してまいります。
いうまでもなく,学会は学会員の活動の場ですが,近年多くの学会で会員数が減少してきています。これは少子超高齢化社会を迎えている日本社会の宿命と思われますが,地道な努力で会員数の減少を食い止めていきたいと考えています。魅力的な企画を立て,他学会との連携や非会員の方々を招いてのご講演とともに,栄養学・食糧科学の最新の知見についての議論を深めながら本学会の魅力を知っていただきたいと思います。また,学生を含む若手会員の台頭を促す企画も実行していきます。来年度の第79回大会から新たに若手シンポジウムを本部管轄のシンポジウムとして開催します。ゆくゆくは,若手の会を立ち上げて,若手の研究者の先生方に主導を渡してシンポジウムの継続やホームページでの情報発信,ならびに学会誌への記事の掲載を進めたいと考えています。
さらに,本学会は女性会員が約半数を占めており,他学会と比べて女性会員の割合が高いという特徴があります。しかし,理事や各種委員会委員の女性比率が低いこともあり,2024年にダイバーシティ推進委員会をつくるとともに,一般社団法人男女共同参画学協会連絡会にも参画し,今後は,女性理事や各種委員会の女性委員の増加をはかってまいります。
次に国際交流の強化についてです。現在,韓国食糧栄養学会(KFN)および台湾栄養学会(NST)との合同シンポジウムを双方で定期的に開催して関係を深めていますが,他国との新たな連携も進める所存です。2022年の第22回国際栄養学会議がつい先日のことように思えますが,2025年8月24日からパリで,第23回IUNS―ICN国際栄養学会が「Sustainable Food for Global Health(世界の健康のための持続可能な食糧)」をテーマとして開催されます。本学会では,国際交流の一環としてシンポジウムを二つ開催するべく準備を進めているところです。
ところで,近未来に人類が宇宙に行くことが計画されていることはご存じかと思います。アルテミス計画では月の軌道上の宇宙ステーションと月面基地をつくり,火星の有人探査の実現を目指しています。このため,現状では宇宙空間での健康·栄養などの研究開発がより求められています。これを受けて本学会では,専門人材の育成や「宇宙食健康認定制度」と称する資格制度を設けるための委員会を立ち上げており,本学会が認定機関を担うべく内閣府と協議しながら事業を進めています。また,宇宙食は,栄養面や保存のための包装面などで災害時の救援食と関連するともいわれています。昨年の第七十八回大会では,能登半島地震の発生により,急遽,災害栄養に関するシンポジウムも開催しました。最近,激甚災害が増えており,災害栄養についても進めるべき課題と認識しています。
以上のような観点から,日本栄養・食糧学会では未来の栄養学・食糧科学の発展を担う活動を続けてまいります。
目 次
第121号令和7年1月1日
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