新時代の 法学・憲法

著 者
発行年月日
2019年3月20日
ISBN
978-4-7679-4346-6
Cコード
C3032
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定価 2,530(本体価格:2,300円) 在庫あり

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内容紹介

大学等の教養科目の「法学」「憲法」の教科書。生活に基本的な法分野と憲法のわかりやすい説明に努める。平和や権利・義務を考える端緒に。

まえがき

はじめに

 法を学ぶ,というとかた苦しく面倒な印象がある。裁判官や弁護士や学者,そこまではいかなくとも公務員や各種の資格をめざす人にとっては,学ぶ苦労が必要な場合もある。しかし,法を学ぶことはこれらの人にだけ必要なのだろうか。

 人は,家族で暮らし,村や都市をつくり,国家をつくり,グローバルネットワークでつながっている。誰もが他者とともに生きているのである。自分が孤独でないことは心強いが,同時に,他者と折り合いをつけて暮らすためには,それぞれが勝手に行動して紛争を起こしたのでは困る。法というルールは,世の中をうまく維持するためのものである。それがどんなルールなのかを知ることは誰にとっても大切なはずである。

 夏目漱石は『草枕』で,「人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて,越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。」と言っている。

 漱石の言うとおり,この世の中は,ただの人がつくっている。人でなしの国へ引っ越すのがいやなら,この世の中を少しでも住みやすくしていくほかはない。だとすれば法を技術的にばかり考えず,ふつうの人に必要な基礎知識や法的センスを育てていくこともまた大事な法学教育であるということがわかる。

 大正期に東京帝大教授末弘厳太郎は『農村法律問題』という書物を書いた。地主と小作人の争議が頻発していた時期である。大学は欧州理論の輸入に忙しい。法知識をもっとも必要としている場所に法知識が届いていないことが,この傑出した法学者には見えたのである。法が支配層の独占物ではなく,誰にでも法知識が必要なことがはじめて発見されたと言っていい。

 本書『新時代の法学・憲法』は法学部で学ばない,おそらく法を学ぶ最初で最後の機会になるようなふつうの学生のために書かれた。折しも人類はサイバー空間という新大陸を発見し,日本では民法が改正され,平成が終わって,さまざまな社会制度,人間関係,国際関係が驚くような速度で変わりつつある。6人の著者は,この変化に目を配りながら,生活に基本的な法分野と憲法のわかりやすい説明につとめたつもりである。本書が,ほんの少し暮らしに役立ち,平和や権利,憲法や法律について考えるきっかけとなればありがたいと思う。

 2019年2月

山田 勉

笹田哲男

目 次

第Ⅰ部 法 学

第1章 法の種類と権利の主体

1.法とは何か

2.法の解釈

3.法の種類

4.法と権利

5.権利の主体

第2章 婚姻と離婚

1.結 婚

2.婚姻の解消

3.婚約・内縁

第3章 親 子

1.実 子

2.養 子

3.親 権

第4章 扶養と公的扶助,保険

1.扶養と公的扶助

2.社会保険

第5章 相 続

1.相続の意義

2.相続人

3.相続分

4.遺産分割

5.相続の承認と法規

6.遺言と遺留分

第6章 物権と債権

1.権利とは何か

2.私権の分類

3.物権と債権の違い

4.私権の行使―その自由と限界

第7章 契約―成立と解除,借地権―

1.契約とは

2.契約の成立

3.契約の効力

4.契約の解除

第8章 契約―消費貸借ほか―

1.契約の類型

2.消費貸借契約とは

3.金銭消費貸借契約

4.クレジットカードの利用とその仕組み

5.住宅ローン

第9章 不法行為

1.日常生活と不法行為

2.不法行為の意義

3.不法行為制度の目的と機能

4.不法行為の要件

5.不法行為の効果―損害賠償

第10章 消費者法

1.消費者法とは

2.消費者を取り巻く問題状況

3.さまざまな消費者問題に対応する消費者法

第11章 労働法

1.労働法とは

2.労働基準法

3.労働組合法

4.労働関係調整法

第12章 医事法

1.医療と法

2.生命の操作

3.人の終焉に関わる問題

第13章 刑事法

1.刑法の機能と基本原則

2.犯罪の成立要件

3.現行の刑罰制度

第14章 紛争解決

1.公的な紛争解決方法の必要性

2.裁判所の種類

3.地方裁判所における審理の概要

4.簡易裁判所の手続き

5.家庭裁判所の手続き


第Ⅱ部 憲 法

第15章 憲法の性質

1.異文化としての憲法

2.憲法の誕生

3.明治憲法の成立

4.民主的日本国憲法の成立

第16章 国民主権と人権

1.国民主権

2.基本的人権の性質

3.自由権

4.社会権

5.個人の人権と公共性

第17章 個人の尊重

1.個人の尊重と幸福の追求

2.新しい人権

第18章 法の下の平等

1.平等権の法的性格

2.平等権の内容

3.代表的な判例

第19章 精神の自由

1.思想・良心の自由

2.信教の自由

3.表現の自由

4.学問の自由

第20章 人身の自由

1.奴隷的拘束,苦役からの自由

2.法廷手続きの保障

3.被疑者の権利

4.被告人の権利

第21章 経済活動の自由

1.経済的自由・財産権の保障

2.経済的自由・財産権の保障についての歴史的変遷

3.職業選択の自由

4.居住・移転・外国移住の自由

5.財産権の保障

第22章 社会権

1.自由権と社会腱

2.生存権

3.教育を受ける権利

4.労働者の権利

第23章 参政権と義務

1.参政権

2.選挙制度と選挙権

3.基本的義務

第24章 立法権

1.国会と立法権

2.国会・議院の権能,議員の特権

第25章 行政権

1.行政権と内閣

2.内閣の権能

3.議院内閣制

第26章 司法権/地方自治

1.司法権

2.地方自治

第27章 平和主義

1.平和主義憲法の形成

2.自衛戦争の否定

3.自衛のための武力行使の肯定

4.個別的自衛権と集団的自衛権

第28章 象徴天皇制

1.天皇の地位

2.国事行為

3.皇位の継承

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書籍情報

シリーズ名・巻数
書籍名 法学・憲法
著 者
分 野
シリーズ
ISBN 978-4-7679-4346-6
Cコード C3032
定 価 2,530円 (本体価格:2,300円)
発行年月日 2019年3月20日
版型・装丁 A5 並製
ページ数 216ページ
関連タグ