運動障害性構音障害dysarthria,発語失行,がんによる器質性構音障害,喉頭摘出後の音声の問題を取り上げ,疾患別にアプローチ。臨床に有益な情報を多数含め,明快に解説した入門書。現場でも役立つ一冊。
内容紹介
まえがき
まえがき
本シリーズ「クリア言語聴覚療法」の前身である「言語聴覚療法シリーズ」が巻構成を改めた中で,本書は,『運動障害性構音障害』および『器質性構音障害』の一部で扱っていた内容を統合し,『成人発声発語障害』として一書を編んだ。
本書のカバーする範囲は運動障害性構音障害(dysarthria),発語失行,がんによる器質性構音障害,喉頭摘出後の音声の問題である。本書に取り上げなかった発声発語の障害として音声障害,吃音・流暢性障害,脳性麻痺などに起因する運動障害性構音障害,発達性の発語失行,難聴に伴う構音の問題などがある。これらはシリーズの他巻に譲った。
障害をどのように定義し,分類するかについては言語聴覚障害学の中でも中核的なテーマであり,長い歴史的な経緯がある。本書で取り上げた障害と他書に譲った障害の間には共通のメカニズムや連続性が想定されるものもある。本書では初学者の理解しやすさといった学習的な理由から,また実際に言語聴覚士が所属する診療科,施設で遭遇する疾患カテゴリーの多寡といった社会的な理由から,このような構成をとったことをご理解いただきたい。
本書編集で心掛けたことは,初学者に理解しやすいということに加え,実際の臨床に有益な情報をできるだけ多く提供することである。このために運動障害性構音障害に関してはタイプ分類別ではなく原疾患別の章立てとした。臨床場面では原因となる疾患の一般的な特性,合併症状,予後などの理解なくしてリハビリテーションの実施はありえない。このため原疾患全般の理解を図ったうえで,言語障害としての評価,介入のポイントを記載することとした。執筆にあたってはこれらの障害に精通する言語聴覚士にお願いした。疾患別のアプローチをとったことで,各領域で記載の重複が発生したのはある程度やむを得ないことと考えた。神経学的説明,用語に関してはできる限り統一を図り,側注,コラムで理解がえられるよう解説を加えた。
最後に,本書をまとめるにあたり,編者からの様々なお願いに快く応じていただいた先生方,停滞しがちな編者の作業をサポートいただいた建帛社編集担当諸氏に深く感謝申し上げたい。
2024年7月
椎名英貴・中山剛志
目 次
第1章 発声発語 speech の障害概論
Ⅰはじめに
Ⅱ発語の障害
第2章 日本語の音声学
Ⅰ音声学とは
Ⅱ音素とその実現
Ⅲ日本語の音声
Ⅳ音声学とヒトのコミュニケーション
第3章 発声発語器官の解剖
Ⅰ発声発語の起源と主要構造
Ⅱ呼吸と発声にかかわる構造
Ⅲ発語にかかわる構造
Ⅳ発声発語の神経学的基盤
第4章 発声発語の生理
Ⅰ発声発語機構と機能連関
Ⅱ発声発語を支える呼吸
Ⅲ咽頭と発声発語
Ⅳ声道の共鳴と構音
第5章 臨床の流れ
Ⅰ情報収集
Ⅱ評 価
Ⅲ臨床推論・方向性の決定
Ⅳ訓練・指導
Ⅴチームアプローチ
Ⅵリスク管理
第6章 運動障害性構音障害
Ⅰ運動障害性構音障害概論
Ⅱ評 価
Ⅲ臨床推論(クリニカルリーズニング)
Ⅳ言語聴覚療法
第7章 運動障害性構音障害の疾患別アプローチ
Ⅰ脳卒中(痙性構音障害,UUMN構音障害)
Ⅱパーキンソン病(運動低下性構音障害)
Ⅲハンチントン舞踏病等(運動過多性構音障害)
Ⅳ脊髄小脳変性症(失調構音障害)
Ⅴ筋萎縮性側索硬化症(ALS)(混合性構音障害)
Ⅵ重症筋無力症等(弛緩性構音障害)
第8章 発語失行
Ⅰ障害の概論
Ⅱ評価・鑑別
Ⅲ治療的介入
Ⅳ症例(架空症例)
第9章 がんによる発声発語障害
Ⅰ口腔がん・咽頭がん
Ⅱ咽頭摘出に対して
この本をみた方に
おすすめの書籍
-
-
pickup
言語発達障害
定型的な言語発達の経過,各言語発達障害を詳説。検査・指導・支援・評価・多職種連携等について,図表やイラストも使用し具体的にわかりやすく解説した。小児領域での需要が増す言語聴覚士の必携書。
-
-
-
pickup
地域言語聴覚療法
新規科目「地域言語聴覚療法学」の最新テキスト。言語聴覚障害のある人とそれを取り巻くすべての人が自分の暮らす地域社会で自立した生活を送るための支援を学ぶ。成人・小児の事例からわかりやすく解説。
-
-
-
pickup
高次脳機能障害
高次脳機能障害とは何か,障害における様々な症状の特徴,原因となり得る病変,評価法等に加え,リハビリテーションについても言及。言語聴覚士を目指す学生に最適な高次脳機能障害の入門書。
-
-
-
pickup
音声障害
音声障害の基礎知識,臨床(言語聴覚士の役割,検査,治療),専門性を要する特殊な病態の対応まで網羅した入門書。さらに新しい音声治療を含めた最新情報も盛り込み,臨床の場でも役立つ一冊にまとめた。
-
-
-
pickup
聴覚障害
聴覚領域に必要な検査,難聴児療育対応,補聴器フィッティング,人工内耳マッピング,中途失聴への支援,高齢難聴者への補聴・聴覚リハなどの技能習得のための入門書。具体例,図表やイラスト多用で明瞭。
-
書籍に関する
感想・お問合わせ
下記フォームに必要事項をご入力いただき、一旦ご確認された上で送信ボタンをクリックしてください。
なお、ご返信さしあげるまでに数日を要する場合がございます。