定型的な言語発達の経過,各言語発達障害を詳説。検査・指導・支援・評価・多職種連携等について,図表やイラストも使用し具体的にわかりやすく解説した。小児領域での需要が増す言語聴覚士の必携書。
内容紹介
まえがき
まえがき
かつて小児領域で言語聴覚士が求められる場は,病院や療育センターなど非常に限定されていた。しかし,2012年の児童福祉法の改正を受けて,児童発達支援事業や放課後等デイサービスが導入され,小児領域でも言語聴覚士が広く求められるようになった。また,教育分野では,特別支援教育における「外部専門家」や「巡回相談員」として,言語聴覚士の活躍の場が拡大している。このような社会情勢の変化から,以前と比較すると小児領域における言語聴覚士の需要は高まっていると考えられる。
上述した法令の改正,特別支援教育における新しい制度の導入など,小児領域で言語聴覚士が学ぶべき内容は年々増加している。医学的診断名の変更や,評価に用いる検査の増加に伴い,これらに関する知識と技術も身につけなければならない。また,障害の特性理解や評価法・指導法に関する新知見が報告され,今後もますます盛んになるであろうこれらの研究も常に理解している必要がある。
そこで本書は,言語聴覚士を目指す学生が学ばなければならない,国家試験の出題基準に準拠した内容を基本とし,医学・福祉・教育領域に関する新しい知見や,臨床の場で必要になる知識・技術を解説している。編集にあたっては,本書のコンセプトに従い,初学学生が理解しやすいようにできる限り平明な文章で,必要最小限の内容に止めた。より深く学習されたい方は『言語聴覚士のための臨床実習テキスト-小児編』(深浦順一・内山千鶴子編著,建帛社)をご覧いただきたい。
本書第1章は障害を学ぶ前に知っておく必要がある定型の言語発達の推移を発達時期に従って示した。第2章は言語発達障害の種類と病態を端的にまとめた。第3章は評価に関して,具体的な方法から報告書の書き方までを網羅し,卒後も役に立つ構成とした。第4章は指導・支援に関して,最近の知見を盛り込み,初学学生の理解を助けるべく,図表やイラストを使用しわかりやすくする工夫をした。第5章は発達障害における各障害の特徴とそれぞれの評価法・指導法を簡潔に示した。第6章は小児領域の言語聴覚療法では欠かせない保健センター,保育所等,学校などとの地域包括支援の概念を交えて,多職種の連携をまとめた。
本書が良き学びの手引きとなり,多くの言語聴覚士が小児領域で活躍できることを願っている。
2024年8月
内山千鶴子・後藤多可志
目 次
第1章 定型的な言語発達
Ⅰ言語・コミュニケーションとは何か
Ⅱ言語・コミュニケーションの発達と基礎
Ⅲ前言語期(0~1歳)の定型的な言語発達
Ⅳ語彙獲得期(1~2歳)の定型的な言語発達
Ⅴ語彙獲得期以降の幼児期(2~6歳)の定型的な言語発達
Ⅵ学童期(6~12歳)の定型的な言語発達
第2章 言語発達障害学
Ⅰ言語発達障害の定義
Ⅱ言語発達障害と関連する様々な障害
Ⅲ言語発達障害の病態
第3章 言語発達障害の評価
Ⅰ評価とは
Ⅱ情報収集
Ⅲ行動観察
Ⅳ検 査
Ⅴ評価のまとめと方針の設定
Ⅵ記録のとり方
Ⅶ報告書の書き方
第4章 指導・支援について
Ⅰ指導・支援とは
Ⅱ発達段階に即した指導
Ⅲ各種指導・支援の方法
Ⅳ個別指導と集団指導
Ⅴ保護者・家族支援
第5章 言語発達障害各論
Ⅰ知的発達症
Ⅱ脳性麻痺・重症心身障害
Ⅲ自閉スペクトラム症
Ⅳ特異的言語発達障害
Ⅴ学習障害
Ⅵ注意欠陥多動症
Ⅶ後天性言語障害
第6章 多職種との連携
Ⅰ多職種との連携とは
Ⅱ連携の原則
Ⅲ乳幼児期における連携
Ⅳ学齢期における連携
Ⅴ青年・成人期における連携
この本をみた方に
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