平成21年9月1日
質の高い言語聴覚療法をめざして
麻生リハビリテーション専門学校 言語聴覚学科長 久保 健彦この著者の書いた書籍
ようやく『言語聴覚療法シリーズ16 AAC』(Augmentative and Alternative Communication:拡大・代替コミュニケーション)の改訂版を出すことができた。進行する病気のなかで,アレがやりたいコレがやりたいということを伝えてくださり,何かやるたびに「ありがとう!」といってくださることで自分を育ててくださった患者さんたちに,少しでも恩返しをしたいというのが,初版・改訂版を通した思いだった。
また,AACというのは,何か特別なことではなく,日々の言語聴覚臨床の延長上にあるものだというスタンスも変わっていない。特に,もともと小児領域の仕事をし,その後成人領域にもかかわっていった私にとっては,コミュニケーション行動全体のなかで言語聴覚士にできる支援を考えていくというのは当然のことだった。ある意味では,言語聴覚士の仕事自体がコミュニケーションの「拡大・代替」を支えていくものといえなくはない。
いま言語聴覚士が置かれている状況については,悲観する必要はないけれど楽観もできない,といったところであろうか。一方では少しずつながら社会的な認知も進み,理学療法士や作業療法士との待遇の格差もほとんどなくなった。介護保険にも言語聴覚士が位置づけられ,この領域に携わる言語聴覚士は急増し(もともとの絶対数が少なかったこともあり)毎年倍々に増えている状況である。他方,医療や介護保険にかかわる総予算が抑制されるなかで,ほかの職種ともども,毎日の業務はますます忙しくなり,余裕を失っている状況もある。そして,少しずつ社会的な認知度がアップしているとはいえ,言語聴覚士になろうとする若い人の数は,少子化や学校数の増加を考えると,横ばいから微増といったところではないだろうか。いつでもどこででも質の高い言語聴覚療法を提供していくにはまだまだほど遠い状況である。
こうした状況を打開していく方法の一つが,生活レベルで私たちのサービスがいかに役立つものなのかをわかりやすく展開していくことではないだろうか。AACのさまざまな技法や機器類は,そのなかでは大きな役割を果たすと考えている。
今回の改訂では,機器類の紹介という意味では,あまり付け加えたものはない。確かに,脳波センサーの商品化のように新しい機器は開発されるし,パソコンの機能の高度化も日々進んでいる。しかし,コミュニケーション機器の状況をみると,全く新しいコンセプトのものが開発されるというよりも,場合によっては機能を絞り込んだりしながら,より使いやすい,生活に密着したものが出されているという印象を受ける。そんななかで心がけたことは,よりわかりやすく,具体的に,実践的にということであった。
この本が,学生はもちろんだが,いま仕事をしている若い言語聴覚士の仕事の幅を広げ,私たちのサービスを必要とされている方々の役に立つことを願ってやまない。
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