令和7年1月1日
専門書出版社の果たす役割(社長年頭の辞)
新年あけましておめでとうございます
本年も宜しくお願い申し上げます
昨年は元旦の能登半島地震から痛ましいニュースが続きました。復興がままならぬ中,9月には集中豪雨が発生し,被災された方々には改めてお見舞い申し上げます。一方,スポーツでは明るいニュースの多い1年でした。パリオリンピック・パラリンピックでは日本は過去最多のメダルを獲得,野球のメジャーリーグでは大谷翔平選手が50HR―50盗塁の偉業を成し遂げ,ナ・リーグMVPにも選出され,日本中が大いに沸きました。今年も明るいニュースで日本が活気づくよう願ってやみません。
弊社では昨年,新刊28点,改訂版15点を発行し,一昨年に比べて新刊が約10点増えております。リハビリ分野における言語聴覚士養成向け教科書を全面的に刷新したことが大きな動きとなりました。今年は,昨年10月に「日本人の食事摂取基準(2025年版)」が公表されたことを受け,栄養関連の教科書は大幅に見直しが必要となります。早いものでは今年度の教科書から対応できるよう予定しています。関連書籍をご執筆いただく先生方にはお力添えいただけますようこの場を借りてお願い申し上げます。
近年,先生方から「学生の学力が低下していて教科書を読み解けない」という声を聞くことが増えました。「令和5年度国語に関する世論調査」(文化庁)によると1か月に読む本の冊数(雑誌や漫画は除く)は,「読まない」が過去最高の62.6%(5年前調査時,47.3%)となっています。読書量の減少理由は「情報機器で時間が取られる」(43.6%)が最も高く,隙間時間にはすぐにスマホでSNSやゲームに興じることが多くなり,腰を据えて読書をする習慣がなくなってきたのでしょうか。
高等教育においては,著作権法の改正により2020年度から授業目的公衆送信補償金制度が開始され,補償金を支払うことで著作物をスキャンして授業資料として学生へ配信できるようになりました。しかし「著作権者の利益を不当に害する」場合は例外です。昨今,本制度の利用法が専門書出版社の存続を脅かす状況が懸念されています。教科書・専門書は,当該科目修得のために編著者および出版社によってストーリーのある1冊として大切に編纂されます。それらの全ページまたは大部分をコピーすることは,著作権法違反となり得る行為です。専門書出版社はごく小さな規模の得意領域を有しており,仮にその社が廃業すれば,出版物として発行していた過去の資産やノウハウが散逸し,該当領域の学術の蓄積が失われてしまいます。
高等教育は,社会人として自立していく前の最終学府です。学生減の現状を含め,指導に苦慮する先生方の姿をお見受けすることが多くなりました。専門書出版社として,学生が正しい知識と教養を身につけて社会で活躍することができるような専門教科書づくりを心がけてまいりますことと同時に,研究者の成果の蓄積の場として,先生方と共に歩んでいければ幸いです。
目 次
第121号令和7年1月1日
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