
令和8年1月1日
子ども主体の遊びを実現する保育の形とは?
白鷗大学教授 伊勢正明この著者の書いた書籍
保育実習の巡回指導のために訪問した複数の保育所で,大変興味深いお話をお聞きした。それらは同一法人下の保育所というわけではなく,それぞれ別法人の保育所であったのだが,ほぼ同じ内容のご指摘をいただいた。
「私たちは“子ども主体の保育”の実践に取り組んでいるが,養成校の学生が指導実習のための相談にもってくる指導案は“一斉保育”の内容ばかり。せっかく現場が子ども主体の保育の実践に取り組んでいるのにもったいない」という趣旨だ。
とある保育実習のテキストでも,同様の記述をみかけた。字面の上では見知っていたはずなのだが,改めて所長先生の肉声でお聞きすると,受け止めがずいぶんと変わるものだ。ご指摘に対しては,「授業でそのことを十分に指導できていなかった」とお詫びし,「近々,還元できるよう研究していきたい」と返すのがやっとであった。
その帰り道,車を運転しつつ様々考えた。次年度の授業内容はどのような編成にするか? そもそも“子ども主体の保育”とは何か? どのような条件が満たされれば“子ども主体の保育”たり得るか? “子ども主体の保育”を学ぶための指導案はどのような書式がよいのか? 疑問はとめどなく浮かんでは消えてゆくが,解が1つも浮かんでこない…。しまいには,「令和7年度保育士養成研究所第一回研修会」でもこれに類する話題が扱われていたことを思い出し,世の保育者養成に携わる者全体の課題だ,という結論に無理矢理収めることにした。
ただ,無理に収めたものは何かの折に「それでよいのか?」と頭をもたげてくる。そこで,個人的に保育に関して心の拠所としている北海道の某保育所へ話を聞きに伺ったり,巡回指導時にご指摘をいただいた保育所にも,再度意見交換のために訪れたりした。
意見交換により私の認識はずいぶん明確になった。仮説だが,①子ども主体の保育を実現する活動に特定の「型」はない,②実習生が取り組む課題に応じて指導案の書式を選択できることが望ましい,である。
子ども主体の保育は,子どもが保育所での生活や遊びを自らの想いや興味・関心に基づいて展開することを援助するものといえる。大切なことは,子どもに現在の活動についての想いを尋ね,子どもの中にある先の見通しを確かめつつ,次の活動の提案や約束をすること,と学んだ。
学生へ教授する内容はよしとして,教材の指導案書式には何らかの追加の工夫が必要だろう。
2025年10月22日,中教審教育課程部会の幼児教育ワーキンググループの初会合が,こども家庭審議会「幼児期までのこどもの育ち部会」の第一回保育専門委員会と合同で開催された,と報じられた。会議の場で「自由保育と一斉保育は対立構造ではなく,適切に組み合わせるハイブリッド型保育が必要」との意見が出されたようだ。
半分賛同できそうで,半分モヤモヤしている。今後も注視していきたい。
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