建帛社だより「土筆」

令和8年1月1日

本の文化を再認識した一年(社長年頭の辞)

あけましておめでとうございます

本年も宜しくお願い申し上げます

年は,大阪万博EXPO2025が開催され,日本中のみならず海外からも多くの旅行者が訪れ,2,557万人もの来場者を数える一大イベントとなりました。

たノーベル賞では,生理学・医学賞で坂口志文先生(大阪大学特任教授),化学賞で北川進先生(京都大学特別教授・副学長)がそれぞれ受賞されました。共に自然科学分野での受賞となり,同分野の出版社として明るいニュースに歓喜しました。受賞会見中,あべ俊子文部科学大臣(当時)からの祝辞電話が入った際に,北川先生が「大学の学生や研究者がのびのびと研究に打ち込める環境を整えてほしい」とおっしゃっていたことが印象的でした。大学訪問時には先生方から,研究費予算の削減や,大学業務の負担増により,研究や論文執筆に十分な予算や時間を割けないなどとお聞きすることがあります。北川先生のおっしゃる通り,大学が研究・開発の推進と未来の人材を育成する場として機能するよう願っております。

社は昨年,新刊22点,改訂版26点を発行しました。2024年10月に公表された「日本人の食事摂取基準2025年版」を受け,管理栄養士・栄養士養成課程向け教科書改訂に重きを置きました。また,昨年は言語聴覚士養成課程のカリキュラム改正が実施されており,既存シリーズの一新を図り,全12巻の新シリーズすべてが刊行に至りました。関連書籍をご執筆いただいております先生方にはご無理を申し上げることもあったかと存じます。この場を借りて御礼申し上げます。

て,英国ロンドンで発行される国際的な雑誌「タイムアウト(Time Out)」では,毎年恒例で世界各地の活気に満ちた魅力的な街を選出する「世界で最もクールな街」ランキングが発表されます。昨年は東京の神保町が第1位に輝きました。文化・コミュニティ・住みやすさ・街のにぎわい,そして「今らしさ」などの要素が評点で,第2位はベルギーのアントワープ,第3位はブラジルのバーハフンド(サンパウロ市内)でした。“本の街”神保町が選ばれたことは,出版に携わる者として大変嬉しいニュースでありました。

年,創業120年の老舗製本工場を見学する機会がありました。製本の機械は正確性・安全性を追求して進歩を遂げている一方で,展示されていた創業当初の工場風景の写真では,同じ工程を手作業で行っている様子が記録されていました。機械化が進んでも,本を本の形に作りあげる工程には何ら変わりがなく,本の文化の原点に触れた気持ちでした。紙の温もりを指先で感じ,紙に乗ったインクの香りを感じ,紙に書き込むことで自身の思考を整理する。五感を使うことで記憶は定着していくものと考えています。

期学習指導要領改定から電子教科書を検定教科書として認めることが発表されました。どちらもよい点があり,落ち着いて学習するには紙,資料検索,音声や画像の活用には電子,などと互いの利点を伸ばす活用が望まれます。今後の動向に注視しつつ,弊社としては社名に込めた「時代を越えて人から人へ伝えることのできるような出版」を心がけるという初心を忘れず,本年も努めてまいります。

目 次

第123号令和8年1月1日

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