栄養士・管理栄養士養成課程のための教科書シリーズ。 栄養学領域の全体を把握しながら個人または集団の栄養評価,栄養計画の実践活動を行える力を身につける。 日本人の食事摂取基準(2020年版),その他急速に発展している栄養学の分野に対応すべく,最新の研究知見のもと内容を見直した四訂版。
内容紹介
まえがき
はじめに
栄養学は二十世紀に発生した学問である。その世紀の前半は,脚気や壊血病などの疾病の原因が,ある種のいわゆる栄養素欠乏に起因することが判明すると,他の栄養素の探求が行われ,つぎつぎにあたらしい栄養素が発見された。そして,二十世紀後半はエネルギー量を含め,各栄養素の摂取適正量の策定研究へと発展した。こうしてわが国では1949年に初めて「栄養所要量」が政府により発表された。また,その栄養の実践指導者である栄養士・管理栄養士養成が盛んに行われるようになった。さらに栄養素の生体内代謝研究により栄養学が進歩し,独立した学問化の道を歩んできた。特にその実験研究は動物対象から人間の臨床に進み,そのエビデンスによる研究が重視されてきた。こうして栄養学は人間の健康になくてはならない実践学問になりつつある。
最近の栄養学は,その学術知識の進歩拡大化とともに分化してきた。基礎栄養学・臨床栄養学・公衆栄養学・母性栄養学・小児栄養学・高齢者栄養学・スポーツ栄養学などがその例である。これらはその必要に応じて栄養士・管理栄養士養成校や医療または保育・体育などの教育の一科目として講じられている。本書は「栄養学総論」と銘打っているが,これは現在の厚生労働省指定の栄養士養成課程カリキュラムに適合させたものである。その内容は基礎栄養学をもとにして,栄養学の歴史,各栄養素とエネルギーの知識と食物とのかかわり,栄養評価・食事摂取基準とその補給,そして栄養と健康を統括したものである。このうちの食事摂取基準は2005年より,従来の「栄養所要量」から「日本人の食事摂取基準」に替えられた。そして,毎年の世界の新しい研究報告を加味して5年ごとに改定されている。
このたび2014年(平成26年)3月に厚生労働省から「日本人の食事摂取基準(2015年版)」が出され,2015年4月から5年間適用することになった。その内容は近年,高血圧,・脂質異常症・糖尿病・慢性腎臓病などの生活習慣病が,脳卒中・心不全・腎不全を多発することから,その重症化を予防することを重視している。その結果,エネルギーの基準値は摂取量と消費バランスで変化するBMI(body mass index)を指標とすることになった。また,摂取エネルギーの産生栄養素の割合を決め,飽和脂肪酸の過剰摂取を押さえることなど,新しい研究成果が盛り込まれている。
本書『栄養学総論』は,高橋敬三先生との共著で出版していたが,高橋先生が逝去されて後は,林淳三が改訂・修正を行ってきた。
今回出版される『栄養学総論』には,従来の林淳三の編著のもとに,先端の研究知識を有する権威ある二人の学部長,関東学院大学倉沢新一教授,東京聖栄大学阿左美章治教授に執筆協力をお願いした。したがって新しい子の『栄養学総論』には,最新の研究知見とともに,今回改定された「日本人の食事摂取基準」がわかりやすく解説されている。また初版出版以来長く多くの読者に読まれた歴史を持つことから,学生の皆さんには栄養学の学習に得がたい書籍であると自認している。どうかこの本で勉学され,優秀な栄養士・管理栄養士になり,国民の健康維持増進のため社会で活躍されることを願う次第である。
2015年2月
編著者 林 淳三
四訂にあたって
2019年12月,「日本人の食事摂取基準(2020年版)」が,厚生労働省より公表された。ついては,第11章を新しい食事摂取基準に沿い見直した。また,三訂版以降の法令改正等,必要な改訂を行い「四訂版」とした。これまでにもまして,活用いただけることを願う。
2020年3月
倉沢 新一
阿左美章治
目 次
第1章 栄養の意義
1.栄養とは
2.栄養素
3.栄養学
第2章 栄養学の歴史
1.栄養学の歩み
2.エネルギー代謝の研究史
3.消化と代謝の研究史
4.わが国の栄養学の歴史
第3章 栄養素と食物
1.人体の成分と栄養素
2.食物成分
3.食品の機能性とその種類
4.保健機能食品
第4章 食物の摂取
1.食欲
2.消化と吸収
第5章 炭水化物とその栄養
1.炭水化物の化学
2.炭水化物の消化と吸収
3.炭水化物の代謝と栄養
第6章 脂質とその栄養
1.脂質の化学
2.脂質の消化と吸収
3.脂質の代謝と栄養
第7章 たんぱく質とその栄養
1.たんぱく質とアミノ酸
2.たんぱく質の消化と吸収
3.たんぱく質の機能と代謝
4.たんぱく質の栄養
第8章 無機質,水とその栄養
1.無機質の定義と種類
2.無機質の機能
3.カルシウム
4.リン
5.マグネシウム
6.ナトリウムおよび塩素
7.カリウム
8.鉄
9.その他の無機質
10.水
第9章 ビタミンとその栄養
1.ビタミンの定義と種類
2.脂溶性ビタミン
3.水溶性ビタミン
第10章 エネルギー代謝
1.エネルギー
2.エネルギーの消費
3.エネルギーの補給
第11章 栄養評価・食事摂取基準
1.栄養評価
2.食事摂取基準
3.栄養補給
第12章 栄養と健康
1.低栄養における健康状態
2.生活条件と栄養
3.遺伝子と栄養
4.健康な食生活
この本をみた方に
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