成熟した民主主義国家においては,社会福祉政策が充実するはずである。人間の尊厳に基づく個人を尊重する考え方に支えられることによって,社会福祉の充実が促されるはずだからである。しかし「できているはず」の社会福祉政策も,予想もしない突然の出来事で,矛盾点が露わになることがある。その重要な一つのインシデントが災害である。……(中略)……災害福祉対策を考えることは,私たちの社会の未熟な点や矛盾点を改善していくための取り組みにほかならないのである。……(中略)……福祉支援の取組みを強化すべきとの議論もあるものの,回復力の「レジリエンス」としての議論は災害福祉としてはそれほど多くなされているわけではなく,未だ道半ばである。そこで本書は,レジリエンスの展開を基本とする災害福祉についてまとめてみた。
―はじめに より―