国家試験に必須の領域を網羅した総合的入門書。臨床現場において必要な知識・技術,多(他)職種連携等についても解説。研究活動の進め方や社会的活動等にも触れ,言語聴覚士としてさらなる飛躍を目指す。
内容紹介
まえがき
まえがき
1997(平成9)年の言語聴覚士法制定により言語聴覚士が国家資格となって以来,25 回の国家試験が実施され,2023(令和5)年現在約4万人の資格保有者が誕生している。当初は,対象児・者への介入は言語室内で行われることが多く,他職種からは「言語聴覚士は何をする人?」といわれることも少なくなかったと聞く。
25 年とまだまだ歴史は浅いが,社会保障制度や人口構造の変化によって,言語聴覚士を取り巻く環境は目まぐるしく変化してきた。医療現場や介護保険領域,障害者福祉領域,学校教育現場で急速に言語聴覚士の需要が拡大し,成人領域の言語聴覚療法においては急性期・回復期・生活期と,ライフステージ別での介入が主体となるなど,働き方も大幅に変わった。
言語聴覚士は主に「聞こえ」「ことば」「高次脳機能」「摂食嚥下」に障害のある人を支援する専門職である。その活動は,医療専門職(医師,歯科医師,看護師,理学療法士,作業療法士など),保健・福祉・教育専門職(ケースワーカー,介護福祉士,介護支援専門員,公認心理師,教師など)と連携し,チームの一員として行うことがほとんどである。
言語聴覚士同士,さらには多職種との連携が重要なこの時代において,言語聴覚士は,周辺の関連職種や,対象児・者や家族などから信頼されることが必要である。
臨床現場では,知識や技術はもちろんのこと,観察力や想像力,対象児・者に的確に伝えるための表現力や,何を伝えようとしているのかを推測する力も必要とされる。そのためには,つねに冷静に人と接し適切な信頼関係を築くこと,対象児・者の思いを受け止めることのできる,豊かな人間性が大切である。
本書は,言語聴覚士の仕事に関する内容としてコミュニケーション,連携,職業倫理,リスクマネジメント,研究の進め方,養成教育の在り方,言語聴覚士の社会的活動など,「言語聴覚障害総論」として学ぶべき内容が簡潔にまとめられている。言語聴覚士を目指す人が,最初に学ぶべき内容である。
障害を負ってもその後の人生の質を高めようと大切な時間を言語聴覚士と歩んでくれる対象児・者がいることを忘れず,どのような状況であっても対象児・者のニーズに合った言語聴覚療法を提供でき,対象児・者の心に寄り添える言語聴覚士に向かって精進されることを期待している。
2023 年 12 月
内山量史・鈴木真生
目 次
言語聴覚士の仕事 言語聴覚障害入門 言語聴覚士の養成 言語聴覚療法の評価 言語聴覚療法とチームアプローチ 言語聴覚士の職業倫理 言語聴覚士のリスクマネジメント 言語聴覚士の研究活動 言語聴覚士の社会的活動
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