学習に苦渋する領域とされる失語症をわかりやすく順序立てて解説。視覚的理解を深めるための脳画像を含む図や表を多数掲載。初学者の立場に立ち必要と思われる語句は側注にて解説。これぞ失語症の入門書。
内容紹介
まえがき
まえがき
本シリーズの前身である「言語聴覚療法シリーズ」の『失語症』は 2000 年 11 月に初版が発行され,その後改訂版が 2011 年4月に発行された。そして今回,13 年の時を経て,新シリーズの一巻として本書を発行するに至った。
筆者が失語症の講義を受け持つようになった当初から,失語症に関する学問領域は他領域と比べて「よくわからない」「難しい」との声があがっていた。また養成校の先生方からは,どのような内容をどのような順序で教示していけばよいのか悩むという声も多く聞かれていた。
そのような状況が継続していると感じる昨今だが,現在では多くの失語症に関する書物が刊行され,評価や症状に重点を置いたもの,訓練に重点を置いたものなど,様々な特徴を有するものが多数存在している。そのように充実した書籍がある中で,本書は,失語症の入門書であることをコンセプトとした。そもそも先にも述べたが,失語症という学問領域は学生にとっては非常に学ぶことに難渋する領域である。加えて最近の学生の特徴として,文章を読解することを苦手とし,嫌がる傾向にある。
このような現状を踏まえて,執筆にあたりまず取り組んだのは,可能な限り学びの順序性が学生にイメージしやすくなるような目次づくりである。また,失語症に関連する脳画像等の図や表を多く取り入れ,視覚的にも理解しやすくなるようレイアウトにも工夫を施した。さらに臨床の場では当たり前のように用いられている用語についても,学生の立場に立ち,解説の必要性を感じるものについては,側注を活用して,理解しやすい簡単な説明を加えた。以上のような意識を元に執筆したこともあり,読むことを苦手としている学生にも手に取ってもらいやすい内容になったのではないかと自負している。
最後に本書をまとめるにあたり,済生会熊本病院の脳神経内科副部長 稲富雄一郎先生には多くの貴重な脳画像を提供いただいた。この場を借りて深く感謝を申し上げたい。
本書によって,学生のみならず失語症の臨床に携われている先生方にも,失語症に付随する様々な症状や社会生活で抱える問題などを再度意識していただければ幸いである。
2024 年5月
大塚裕一・宮本恵美
目 次
第1章 失語症の歴史
Ⅰ 失語症研究 19世紀
Ⅱ 失語症研究 20世紀
Ⅲ 失語症研究 21世紀
第2章 失語症の基礎
Ⅰ 失語症の定義
Ⅱ 失語症の解剖と生理
Ⅲ 失語症の原因
Ⅳ 失語症の症状
Ⅴ 失語症の分類
Ⅵ 失語症の近縁症状
第3章 失語症の臨床
Ⅰ 失語症のリハビリテーションの流れ
Ⅱ 失語症の評価
Ⅲ 失語症の訓練
Ⅳ 失語症の予後
第4章 失語症の環境調整
Ⅰ 失語症の心理的・社会的問題
Ⅱ 各期の援助
Ⅲ 周囲へのアプローチと社会復帰
Ⅳ 失語症友の会活動
この本をみた方に
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