高次脳機能障害とは何か,障害における様々な症状の特徴,原因となり得る病変,評価法等に加え,リハビリテーションについても言及。言語聴覚士を目指す学生に最適な高次脳機能障害の入門書。
脳損傷に起因する言語,思考,行為,記憶,注意,認知などの障害である「高次脳機能障害」については,近年,社会の感心が高まっており,高次脳機能障害のリハビリテーションの発展,それに携わる言語聴覚士の臨床の質の向上についてもその必要性が増している。
本書『クリア言語聴覚療法3 高次脳機能障害』は,言語聴覚士を目指す学生に向けて構成・編集した入門書であるが,臨床経験の浅い言語聴覚士にとっても有用となる最新の知見,研究成果や症例を豊富な図表ととも提示している。
第1章「高次脳機能障害」では,障害の定義,障害の主要症状と背景症状,障害の診断基準,障害に対する行政的支援対策について解説している。
第2章「脳の構造と機能,疾患」では,神経系を中心に脳の基本構造やその機能について述べたうえで,高次脳機能障害の画像診断,高次脳機能障害の原因疾患,高次脳機能(種々の認知機能等)と脳の構造との関係を研究する神経心理学について概説した。
第3章は「高次脳機能障害の症状とリハビリテーション」と題し,注意と注意障害,記憶障害,失認,視空間障害,動作・行為の障害,前頭葉機能障害,脳梁離断症候群,認知症,および脳外傷による高次脳機能障害の概念,症状,評価と,対象者のQOL向上のためのリハビリテーションについて示した。また,近年特に注目されている,注意・記憶・組織化・情報処理・問題解決・遂行機能などの認知機能障害によって生じるコミュニケーション障害についても概説した。
本書の執筆者らはいずれも豊富な臨床経験をもつ言語聴覚士,医師であり,本書『高次脳機能障害』は,先述した初学者のみならず,現役の臨床家にとっても日々の臨床に役立つ1冊となると考える。