摂食嚥下の機構や障害発生のメカニズム,検査・評価法,病態生理等を最新の知見を踏まえて解説。近年需要を増す摂食嚥下障害のリハビリテーション実施に臨む言語聴覚士の専門性向上にも有用な書。
内容紹介
まえがき
まえがき
1997年の言語聴覚士法制定により言語聴覚士が国家資格となって以来,26回の国家試験が実施され,資格保有者は2024年現在4万人を超えている。当初は,言語聴覚士がかかわる臨床の中で摂食嚥下障害の分野は多いとはいえなかったが,年々その需要は高まり,現在では「発声・発語」「成人言語・認知」と並んで言語聴覚士にとって主要な対象障害のひとつとなっている。超高齢社会を迎え摂食嚥下障害患者が増える中,「摂食嚥下」活動および参加における言語聴覚士のかかわりは特に重要性を増しており,摂食嚥下障害のもつ階層(機能的制限-機能障害-病態生理)を正確に理解した上で,最適なリハビリテーションの実施が求められている。
2014年に発刊された前シリーズの改訂版では,摂食嚥下障害にかかわる幅広い項目が取り上げられており,本書でも構成の柱は大きく変更していない。しかしながら,2010年代後半から2020年代にかけて,摂食嚥下障害にかかわる基礎・臨床研究は大幅に増えており,検査法の発展,摂食嚥下障害の病態生理・機能障害の解明,リハビリテーションの機器開発などが進み,摂食嚥下障害に対するより効果的な介入が促進されている。そこで本書では,病態生理,評価や訓練方法,倫理的課題への取り組みなど,基本を押さえながら,最新の知見を踏まえてお伝えすることを心がけた。
第1章「摂食嚥下の解剖・生理」では,摂食嚥下の機構や障害発生のメカニズムについて図表を用いて解説をしている。第2章「摂食嚥下障害の評価」では,日々のかかわりの中で注目すべき観察の視点に加え,VF,VE以外の嚥下CTや高解像度マノメトリーなど幅広い検査方法について図などを用いて説明をしている。第3章「摂食嚥下障害のマネジメント」では,言語聴覚士が実践する訓練方法に加えて,歯科的アプローチや外科的アプローチ,吸引などを含めたリスク管理について解説している。また,議論されることが増えてきた摂食嚥下障害にかかる倫理的課題への向き合い方についても取り上げている。第4章では「疾患別の摂食嚥下障害」について,事例を用いて解説をしている。第5章では「発達障害による摂食嚥下障害」について,病態ごとに発達段階によるアプローチのポイントなどを解説している。第6章では「チームアプローチ・地域におけるマネジメント」として,多職種連携チームアプローチ,地域における摂食嚥下障害への対応について言語聴覚士に期待される役割などを解説している。
本書が,障害についての深い理解と実践力を身につけるための有益なリソースとなり,将来の言語聴覚士としての成長と活躍を支える一助となることを願う。また,摂食嚥下障害に取り組むことで,患者の活動再建を向上させるだけでなく,言語聴覚士としての専門性と誇りをもつことができるようになることを期待している。
2024年6月
稲本陽子・髙野麻美
目 次
第1章 摂食嚥下の解剖・生理
Ⅰ摂食嚥下の機構
Ⅱ嚥下障害のメカニズム
第2章 摂食嚥下障害の評価
Ⅰ診察・情報収集
Ⅱ臨床評価
Ⅲ機器を用いた検査
Ⅳ評価のまとめ
第3章 摂食嚥下障害のマネジメント
Ⅰ嚥下訓練
Ⅱ歯科的アプローチ・外科的治療
Ⅲリスク管理
Ⅳその他
第4章 疾患別の摂食嚥下障害
Ⅰ脳血管疾患
Ⅱ頭頸部疾患
Ⅲ神経筋疾患
Ⅳ認知症
第5章 発達障害による摂食嚥下障害
Ⅰ小児の摂食機能の発達
Ⅱ病 態
Ⅲ治療・訓練プログラムと考え方
第6章 チームアプローチ・地域におけるマネジメント
Ⅰチームアプローチ
Ⅱ地域・在宅リハビリテーション
この本をみた方に
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