聴覚領域に必要な検査,難聴児療育対応,補聴器フィッティング,人工内耳マッピング,中途失聴への支援,高齢難聴者への補聴・聴覚リハなどの技能習得のための入門書。具体例,図表やイラスト多用で明瞭。
内容紹介
まえがき
まえがき
「耳が聞こえない,聞こえにくい」ということは,人として生きていくうえで大切な言語を獲得することや音声でコミュニケーションをとることに非常に大きなハンディキャップをもつことになります。言語は,知識を高めるだけではなく,相手の状態を感じ,考え,思いやるという人間の心の働きに大きく貢献しています。しかし,幼少時から聴覚障害があり,適切な時期に適切な療育・教育の機会がなかった場合では,言語発達が遅れるだけではなく,聴覚障害の影響が二次的,三次的にも及びます。また,成人してからの聴覚障害では,言語は獲得していても音声でのコミュニケーションが思うように取り切れないために,人間関係が構築できず,疎外感を感じ,自己肯定感を得られない社会生活を余儀なくされてしまう場合も少なくありません。このようなことに対して,これまで医療,教育,福祉,工学,科学など様々な専門領域の方々が協力し合い,聴覚障害によるハンディキャップを少しでも軽減できるように努力を続けてきました。
聴覚領域の言語聴覚士に求められる技能は多岐にわたります。具体的には,成人および小児を対象とする多様な聴覚検査の技能,新生児聴覚スクリーニング検査の普及による難聴児の療育の超早期化に対応できる支援および指導技能,補聴器の性能の向上に伴うフィッティング技能,人工内耳の機器の進歩に追随したマッピング技能,中途で聞こえなくなった方へのコミュニケーション支援技能,高齢難聴者の補聴・聴覚リハビリテーションへの支援技能などがあげられます。これらの技能を確実に身につけ,実施するためには聴覚障害について十分に理解することが重要です。
本書は,言語聴覚士を目指す学生が学ばなければならない聴覚領域の内容について,言語聴覚士国家試験の出題基準に準拠した内容を基本とし,初学者が理解しやすいように,わかりやすい記述を心がけました。また,新しい知見や臨床の場で必要とされる知識・技術を丁寧に解説するために,具体的な例を示し,図表やイラストを多用するなど工夫を凝らしました。
言語聴覚士を目指す初学者にとってよき学びにつながり,聴覚領域に貢献できる若き言語聴覚士が誕生することで,聴覚障害のある方々の一助となれば編者としては嬉しい限りです。
最後に,本書は執筆者の先生方の多大なご尽力によって完成しました。お世話になった先生方と建帛社の編集部の皆様に心から感謝申し上げます。
2025 年3月
佐藤紀代子・長谷川純
目 次
第1章 「聞こえの障害」とは
Ⅰ 聴覚の機能と発達
Ⅱ 聴覚障害とは
Ⅲ 「聞こえること」と「聞こえにくいこと」
Ⅳ 聴覚障害のリハビリテーション支援のあり方と多職種連携
第2章 聴覚臨床に必要な音の知識
Ⅰ 音の物理的な特徴
Ⅱ 音知覚の心理的な特徴
第3章 聴覚系の構造・機能と病理
Ⅰ 聴覚平衡器の発生
Ⅱ 伝音系の構造と機能
Ⅲ 感音系の構造と機能
Ⅳ 聴覚の病理(疾患)
Ⅴ 難聴に随伴する症状と考慮するべき疾患
Ⅵ 平衡覚疾患
第4章 聴覚・平衡覚の検査
Ⅰ 聴覚機能検査とは
Ⅱ 純音聴力検査
Ⅲ 語音聴力検査
Ⅳ 内耳機能に関する検査
Ⅴ 中耳機能に関する検査
Ⅵ 耳音響放射検査
Ⅶ 聴性誘発反応検査
Ⅷ 乳幼児聴力検査
Ⅸ 平衡機能検査
第5章 聴覚補償機器
Ⅰ 補聴器
Ⅱ 人口聴覚器
Ⅲ 補聴援助システム
第6章 小児聴覚障害への臨床活動
Ⅰ 早期発見・総記療育
Ⅱ 小児聴覚障害の評価
Ⅲ 小児聴覚障害への指導・支援
Ⅳ 学校教育と就労支援
第7章 成人聴覚障害への臨床活動
Ⅰ 成人聴覚障害への多様性
Ⅱ 成人聴覚障害への評価
Ⅲ 成人聴覚障害への指導・支援
第8章 臨床でみられる特殊な聴覚障害
Ⅰ 聴覚情報処理障害(APD)
Ⅱ 一側性難聴
Ⅲ 資格聴覚二重障害(盲ろう)
第9章 聴覚障害に関連した法令と社会福祉制度
Ⅰ 障害者基本法
Ⅱ 身体障害者福祉法
Ⅲ 障害者総合支援法
Ⅳ 経度・中等度難聴児補聴器購入費助成事業
Ⅴ 健康診断における聴覚健診
Ⅷ
この本をみた方に
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