生体における リン脂質の性状と機能性

著 者
発行年月日
2020年10月20日
ISBN
978-4-7679-6215-3
Cコード
C3047
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内容紹介

分子レベルでのリン脂質研究が進展しているのを受け,生体内に存在する多様なリン脂質に関する最先端の研究を分かりやすく記述。

まえがき

序   文

「脂質」は,生体を構成する主要な成分であるとともに,エネルギー源となる栄養素でもある。「油脂」や「脂肪」,「油」というと食品成分をイメージし,我々が日常的に食品から摂取する馴染みのある物質をイメージする。一方,生体内では生物活性を示す脂質メディエーターに変換されるなど,生命活動や健康維持に関わる多彩な機能を担っており,その研究内容は栄養学や食品化学から生化学や分子細胞生物学など幅広い分野にわたる。

 このような脂質の機能や性状,利用に関わる研究内容を議論する懇話会として機能油脂懇話会が設立され活動を続けている。1999(平成11)年夏に九州大学名誉教授の菅野道廣先生を中心に立ち上げられた共役リノール酸(CLA)懇話会が前身となり,2010(平成22)年10月に広く学際的な脂質研究全般に関わる懇話会へと発展した。学会とは異なる自由な雰囲気の中で,脂質に関わる最新の研究成果や知見を紹介し,忌憚のない意見交換を行うことを目的とする会であり,大学関係者や企業研究者などの多くの方々の参加に支えられ20年以上もの長きにわたり開催されている。

 2019(令和元)年11月9 日の第10回機能油脂懇話会(東京,明治大学)では,シンポジウムとして「生体におけるリン脂質の性状と機能性」を開催した。リン脂質は,生体膜の構成成分として細胞や細胞小器官を形づくるばかりでなく,様々な生体応答において重要な役割を果たす脂質である。また,様々な食品中に含まれる食品成分でもあり,トリアシルグリセロールとは異なる健康機能が注目されている。このようなリン脂質の研究は古くから行われてきたが,近年の分離技術や精密機器分析技術の進展により,特定のリン脂質クラスの栄養生理機能やリン脂質分子種の生体機能が次々に明らかにされている。シンポジウムでは,このような研究の高まりを最新の知見を交えてご紹介いただき,リン脂質研究への関心を広げることを目的とした。演者である九州大学(現長崎県立大学)の城内文吾先生からは「リン脂質の栄養生理機能と摂取量について」,静岡県立大学の三浦進司先生からは「骨格筋を構成するリン脂質の「質」制御機構に関する研究」,東北大学(現東京大学)の青木淳賢先生からは「リン脂質sn- 1 位脂肪酸の生物学的意義」についてご講演いただいた。幸いにも,多くの参加者がシンポジウムの講演内容に興味をもたれ,その内容についてより一層理解を深めたいという問い合わせを多数頂戴した。また,リン脂質の栄養生理機能を含めた成書がない現状をふまえて,シンポジウムの内容を書籍として出版することについてお茶の水女子大学名誉教授の近藤和雄先生からご提案をいただいた。

 そのため本書では,シンポジウムの演者に加え,岩手大学の西向めぐみ先生には「プラスマローゲンの吸収と生体機能」についての話題提供をいただき,京都大学の菅原達也が「スフィンゴリン脂質の食品機能」を執筆することにより,全体を構成することができた。

 最新の研究成果をわかりやすく記述したことから,これまでリン脂質を扱ったことのない研究者や学生の方々にも十分理解いただける内容であり,新たな研究展開のための情報提供になれば幸いである。

 最後に,本書を出版する機会を与えて頂きました近藤和雄先生に改めて感謝を申し上げるとともに,企画から出版までご支援,ご尽力頂きました日清オイリオグループ株式会社様,株式会社建帛社様に心からお礼申し上げます。

2020 年9 月

責任編集者 細川雅史

菅原達也

目 次

序 章 リン脂質研究の新展開

1.リン脂質の構造と分類,分布

2.グリセロリン脂質の栄養生理機能

3.リン脂質クオリティと機能

4.リン脂質分子種のリモデリングと調節酵素

5.スフィンゴリン脂質の食品機能

6.プラスマローゲンの吸収と機能性

第1章 リン脂質の栄養生理機能と摂取量

1.メタボリックシンドローム

2.食事リン脂質の栄養生理機能

3.日本人の食事リン脂質クラスの摂取量およびそれらの供給源

4.トリメチルアミン-N-オキシド産生をめぐる問題

第2章 骨格筋のリン脂質クオリティ制御と筋機能への関与

1.リン脂質クオリティの制御とその生理的意義

2.骨格筋のリン脂質クオリティ

3.リン脂質代謝酵素の機能喪失を原因とする筋疾患

4.筋線維タイプとリン脂質クオリティ

5.転写共役因子PGC-1αによる骨格筋リン脂質クオリティの調節

6.骨格筋におけるDHAを含むリン脂質の調節

7.筋萎縮とリポクオリティ

第3章 リン脂質の脂肪酸組成を決定するリゾリン脂質アシル基転移酵素

1.リン脂質の脂肪酸リモデリング仮説の提唱

2.sn-2位を中心としたリモデリングに関わるLPLATの同定とその生物学的意義

3.これまでのリン脂質sn -1位リモデリング機構とその因子の解析

4.新規sn -1位リモデリング因子の同定とその生物学的意義

第4章 スフィンゴリン脂質の食品機能

1.スフィンゴリン脂質について

2.食品成分としてのスフィンゴリン脂質

3.スフィンゴリン脂質の消化と吸収

4.スフィンゴリン脂質の様々な食品機能

第5章 プラスマローゲンの吸収と生体機能

1.プラスマローゲンの分析法

2.血漿中プラスマローゲンの動物種間の比較

3.プラスマローゲンの吸収と変換

4.疾病とプラスマローゲン

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書籍情報

シリーズ名・巻数
書籍名 リン脂質の性状と機能性
著 者
分 野
シリーズ
ISBN 978-4-7679-6215-3
Cコード C3047
定 価 2,640円 (本体価格:2,400円)
発行年月日 2020年10月20日
版型・装丁 A5 並製
ページ数 152ページ
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