平成21年1月1日
高齢者を悪質商法から守るために
経済産業省消費者政策研究官 谷 みどりこの著者の書いた書籍
高齢者などを標的にした悪質商法被害が続いている。
ある会社は,家々を訪問し,足裏マッサージを「無料でお試しいただけます」と言って家に上がり込んだ。低周波治療器を体験させた後,この商品やほかの健康食品等が「血をきれいにする」「糖尿病にもリウマチにも効く」などと根拠のないことを言って勧誘し,契約させた。認知症の症状が現れた高齢者にも,ローンを組ませて買わせていた。
別の会社は,「水道の浄化装置の点検」「風呂の無料点検」等と言って家に入った。そして,「水道管がさびついて腐っている」「風呂場の配水管から水が漏れている」などと言い,「このままでは管が破裂して大変なことになる」「湿気で家がダメになる」などと言って不安をあおり,長時間しつこく勧誘して,リフォームなどの契約をさせていた。
ある宗教法人は,新聞折り込みチラシで「人生相談会をホテルで行う」などと宣伝し,そこに来た人に易鑑定を行って「息子さんの運気がどんどん下がっている」などと告げた。「もし祈願をしなければ,息子さんに大変な災いが起こる」などと脅し,お金がないことを理由に断ると「あなたは息子を助ける気がないのか」などと言って,高額な祈願や御札等の契約をさせていた。
ある会社は,家々を訪問し「イベントがあるので遊びに来てください」などと言って,呉服等の展示会に勧誘した。展示会に来た人を営業員数人で取り囲むなどして長時間しつこく勧誘して契約させ,解約にも応じなかった。認知症が現れた年金生活の高齢者にも,クレジットカード払いなどで次々に契約させていた。
訪問販売や電話勧誘販売,連鎖販売取引(マルチ商法)などは,「特定商取引法」に禁止事項などが規定され,違反すれば,国や都道府県が処分することができる。ここにご紹介したのは,2008年に処分された100社以上のほんの一部の例だ。
「特定商取引法」には,行政処分のほかに,消費者が直接使える規定もある。法の対象となる訪問販売や電話勧誘販売であれば,契約の書面を受け取ってから8日間は,「クーリング・オフ」制度によって解約できる。前述の例では,家で契約した治療器やリフォームはもちろん訪問販売だが,人生相談会や展示会で契約させられた例も,消費者が店に行って契約したわけではなく,法律上は訪問販売に分類される。
マルチ商法ならば,書面を受け取ってから20日間はクーリング・オフできる。クーリング・オフの相談は,経済産業省の消費者相談室(03-3501-4657)や自治体の消費者センターで受け付けている。
この法律は,クレジットに関係する「割賦販売法」とともに昨年改正され,強化された規定が今年末までに施行されていく。詳しいことは,経済産業省のホームページ「消費生活安心ガイド」を参照していただきたい(http://www.no-trouble.jp/)。
悪質事業者は,判断能力が衰えた高齢者などをねらって,次々に契約させる。このような被害は,親族や介護・福祉の関係者などの気づきにより,減らすことができる。悪質商法の手口と消費者を守る法令を知ることが,安心できる暮らしにつながる。これからも,悪質商法と戦っていきたい。
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