平成24年1月1日
「子どもの食と栄養」授業担当者の研究会
名古屋短期大学教授・教務部長 小川 雄二この著者の書いた書籍
2011年度入学生から適用された保育士養成課程では,従来の「小児栄養」は「子どもの食と栄養」という科目名称になり,授業内容も変更された。保育士養成課程において「小児栄養」は,長らく3単位(講義2単位,実習1単位)必修であったが,前回2002年の保育士養成課程の改定で,演習2単位の科目になったのに続く大きな改定である。
幼児をもつ保護者の悩みや日常の保育における保育者の困り事の多くが子どもの食におけるつまずきや,食の保育実践に関することであることから,今回の改定では,栄養学の比重を減らし,「食育の基本とその内容および食育のための環境を理解すること」「家庭や児童福祉施設における食生活の現状と課題について学ぶこと」「特別な配慮を要する子どもの食と栄養について理解すること」などが授業内容に加えられた。
「子どもの食と栄養(小児栄養)」は,保育士養成課程の必修科目であり,保育士試験の8科目のなかの1つでありながら,全国の保育士養成校において専任教員が非常に少ないというのが特徴である。さらに,「小児栄養」を専門的に教えたり,研究したりする大学院等がほとんど存在しないことから,「小児栄養(子どもの食と栄養)」を専門領域とする研究者・教員は,極めて少ないという現実がある。かくいう私も,大学院では食品化学・生化学を専攻しており,縁あって保育士養成課程の小児栄養の専任教員になった者である。多くの養成校で非常勤講師か,同じ大学の栄養・調理系の教員がこの科目を担当している場合が多いのが実情である。
「小児栄養」の授業担当者は,自分自身が「小児栄養」を学んだことはなく,ましてや「子どもの食と栄養」という科目になると,何を教え,どんな授業をしたらよいかわからないという悩みを抱えていることが多い。私自身,今は多少自信をもって授業ができるようになり,教科書も何冊か執筆させていただけるようになったが,新米の短大教員として「小児栄養」を初めて担当することになった26年前は,何を教えたらよいのか本当に困った経験がある。
こうしたことから,全国の保育士養成課程の小児栄養の授業担当者とともに,全国小児栄養研究会(当初は,保育士養成課程における小児栄養を考える会)という研究会を,10年ほど前から組織して,現在は会の代表を務めている。全国の保育士養成課程の「小児栄養(子どもの食と栄養)」の授業を担当しておられる専任教員・非常勤講師が多く集まって,科目内容にかかわる研修,授業内容や教材の交流を中心とした研究会を毎年一回,開催している。
近年,全国の大学で授業改善の取り組みが盛んに行われるようになってきている。同じ大学内の教員同士で授業改善について学び合うことも大切であるが,他の大学の同じ科目の担当者同士が授業の内容も含めて学び合うことで,授業の水準を飛躍的に向上させることができるはずである。
現に私も,この研究会で,たくさんの工夫や教材を全国の先生方から学ばせていただいている。専任教員,非常勤講師を問わず,同じ授業科目の担当者同士が大学を越えて授業内容について学び合うこうした取り組みが,多くの科目で行われることを期待したい。
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