平成29年9月1日
国民生活基礎調査からみえてくる社会 (コラム)
去る6月末,厚生労働省より「平成二十八年国民生活基礎調査」の結果が公表された。今年は,3年に一度の大規模調査の年に当たっている。
まず世帯状況をみてみると,高齢者世帯(65歳以上の者のみで構成するか,またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯)は,1,327万千世帯で,全世帯の26.6%を占めた。一方で児童(18歳未満の未婚の者)のいる世帯は1,166万6,000世帯で,23.4%となっている。それぞれ3年前の大規模調査では,23.2%,24.1%であり,少子高齢化が一層進んでいることがわかる。
所得の状況は,3年前に比して改善がみられ,一世帯当たりの平均所得金額は,545万8,000円で,86,000円増えている。しかし,平成6年の約664万円の最高額には遠く及ばない。また,中央値(所得を低いものから高いものへと順に並べて二等分する境界値)は428万円で,平均所得金額が増加したにもかかわらず3年前より4万円減少している。この金額は,平成21年の平均所得547万5,000円,中央値427万円に近似しており,簡単に「格差社会」が拡大しているとはいえないが,平均所得が増えて,中央値が減ることは,過去の調査ではあまりみられないことではある。
健康の状況では,通院率が,390.2(人口千対)で,平成25年より11.9ポイント上昇しており,前々々回大規模調査の平成19年からは,56.6ポイント,約17%も増加している。高齢社会を反映した国民医療費の増大は,社会保障における最も喫緊の課題であることはいうまでもないが,この数字はそのことを端的に表しているといえるだろう。
介護の状況からは,老老介護のさらなる高齢化がみて取れる。今回の調査では,60歳以上同士の「老老介護」の割合は約7割,65歳以上になると5割強,75歳以上約3割という結果が出た。これを15年前の平成13年の数字と比較してみると,60歳以上約5割,以下4割,2割弱となる。この15年間で,介護する者,される者の年齢が確実に上がったことになる。この間,日本人の平均寿命は男女ともに約2歳上昇しているが,介護の現場では,それを上回る高齢化が進んでいる実態もみえてくる。国は,地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法の改正を行った。しかし,老老介護の課題は残されたままである。
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第106号平成29年9月1日
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