平成30年9月1日
「著作権法」一部改正される (コラム)
去る5月の国会において,著作権法の改正法案が可決・成立した。平成31年1月1日施行となる。
改正趣旨は「デジタル・ネットワーク技術の進展により,新たに生まれる様々な著作物の利用ニーズに的確に対応するため,著作権者の許諾を受ける必要がある範囲を見直し,アーカイブの利活用に係る著作物の利用をより円滑に行えるようにする」ものである。
例えば,ネット上での書籍検索や論文盗用のチェックなどの際の著作物の一部分の表示が,利用許諾なしでできるようになる。
障害者については,今まで視覚障害に限っていた障害範囲を拡大し,肢体不自由等により読者が困難な者を対象とする録音書籍の作成等まで利用許諾なしで行えるようになった。
教育現場においては,ネットワークを通じての教材の異時配信が利用許諾なしで行えるようになる。これまでも紙媒体の著作物を,非営利の教育機関の対面授業で必要ならば許可なしに利用することができる権利制限は,著作権法で規定されていた。また,その授業をオンラインで同時に配信すること(例えば分校などに)も可能とする法改正は行われていた。しかし,それはあくまで「同時」が条件であり,そのデータをサーバーに保存して「異時」に利用する場合には,利用許諾を得る必要があった。今回は同時配信だけではなく,時間差での配信(異時配信)を許す改正である。予習・復習の資料を学生にeメールで送信する,もしくは教材のデータをサーバーに保存し,別の者が別時に利用することも利用許諾なしで可能になる。教育利用に限れば,著作権者の許諾なしで,著作物のデータの公衆送信がある程度自由になるということである。
ただし,この権利制限の拡大は,著作権者側に少なからず不利益が生ずることは明白であり,教育機関側では利用にあたっては「補償金」の名目での利用料金の支払が必要となる。その徴収窓口団体は法律で定められ,全国一律に集中管理されることとなるが,詳細は未定である。そのため,この教育利用の条文に限っては,「公布の日から三年を超えない範囲内において政令で定める日」が施行日となっている。
今後,教育機関による公衆送信を使った教材等マイクロコンテンツ利用は拡大すると思われ,法律の適用範囲の整理・法運用の具体的ガイドラインの作成・教育利用に関する補償金制度の構築が早急に求められる。
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第108号平成30年9月1日
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