令和4年9月1日
難聴児や発達障害児に構音訓練を実施する際のヒント
能登谷晶子
子どもの発音(以下,構音)は幼児期に年齢とともに発達していく。おおよそ5~6歳ころには日本語の構音がほぼ完成されるといわれている。すなわち,就学前には,ほぼ正しい構音が出そろうのである。
4歳ころから,ひらがなの読みに関心をもちはじめることが多いせいか,そのころに親御さんが「かめ」を「ため」,「さかな」を「たかな」と発する我が子の構音の誤りに気づくことがよくある。
口腔の構造に特に異常がなく,難聴もないにもかかわらず,子どもが発する音に誤りがある状態を機能性構音障害という。
この障害は,子どもが幼児期に構音を学習していく途上で学習間違いをした結果,そのまま定着してしまったものと考えられる。現在では,総合病院や耳鼻咽喉科,小児科開業医院にも言語聴覚士(ST)が働いていることが珍しくない。子どもの構音について心配になったら,早めに医療機関へ相談に行くことをおすすめする。
その際,まず受診するところは耳鼻咽喉科である。子どもは言葉を耳から聞いて覚えるため,聞こえは大丈夫かを調べてもらう。聞こえや言葉の発達そのものに遅れがなく,「か行」や「さ行」の構音障害であれば,2~3か月で訓練を終了できる場合も多い。
園や家庭で子どもの構音の誤りを指摘するのは好ましくない。構音障害をもつ子どもへの正しい対応が重要となるため,できるだけ早くSTにつなげてほしい。
また構音障害は,機能性構音障害以外に,口蓋裂,知的障害,発達障害,脳性麻痺,難聴に伴う症例もある。
今回,建帛社より刊行した『症例から学ぶ子どもの構音障害』は,これまでの構音障害に関する書籍ではあまり多くのページが割かれなかった,発達障害や難聴児の構音訓練方法の紹介と,その経過も時経列で示している。臨床現場でかかわる患者さんには,難聴に自閉スペクトラム症,口蓋裂に知的障害を合併している例なども珍しくない。その中で音声言語(話す)を用いて生活する人たちへの構音訓練・指導をどのように行うかについて,参考にしていただきたい。
特に近年,新生児聴覚スクリーニングシステムが充実してきており,補聴器を早期から装用でき,人工内耳の装用も1歳ころから可能になってきている。また,手話ではなく,健聴者と同様に口話で会話できる難聴児も増えてきている。その場合には,聞き手にわかってもらう構音能力が必要であり,構音訓練の果たす意義は大きい。
難聴児をもつ親御さんたちは,我が子の構音は慣れてしまっている場合が多いので,構音を評価,訓練できるSTのところへの受診をおすすめする。構音の誤りの指摘ばかり受けていると,子どもの「話したい」という気持ちをそいでしまうことになる。そうならないためにも,早めに対応してほしい。
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