令和7年9月1日
デジタル教科書活用のこれから
初等中等教育において,GIGAスクール構想のもと、2014年には「1人1台端末」は達成し,学校の無線LAN整備率は約98%と,デジタル授業を行う基盤が急速に整いつつある。
そこで,新たな学びの基本となるデジタル教科書の現況,活用について中央教育審議会デジタル教科書推進ワーキンググループの中間まとめ(2025年2月)を基に考えてみたい。
デジタル教科書は,紙の教科書の代替で使える特別な教材として2019年に制度化され,2024年には国の予算措置で一部教科(英語,算数・数学)の本格導入が進められている。注意点として,現時点でのデジタル教科書の位置付けは教科書代替教材であり,紙の教科書とは扱いが違うことである。制度上,使用義務はなく,紙の教科書と内容は同じであることから,検定はされていない。また,義務教育における無償給付の対象外でもある。当面の間は,紙の教科書と併用し活用していくとされる。
デジタル教科書は,端末画面上に各教科の内容が表示され,文字の拡大・縮小,書き込み・消去・保存,ルビ表示,音声読み上げ等の機能が付いている。特別な配慮が必要な子どものアクセシビリティは各段に向上している。他にも,英語の授業での読み上げ機能,算数・数学の授業での図形を拡大・縮小する機能は,試行錯誤を促すことで反復や考察を十分に行え,理解の深まりが期待できるという。一方,導入にあたっての課題には,導入時の設定作業,端末のフリーズやエラー等誤作動時の対応がある。端末使用時に子どもが学習とは関係のない操作に集中してしまう点,授業を効果的に進めるうえでの実践的情報が不足している点もあげられる。また,健康面では視力低下も懸念される。
紙の教科書は一覧性や俯瞰性に優れており,デジタルにはないリアルな体験は非認知能力を高める。紙かデジタルかという二項対立ではなく,子どもの実態を踏まえ,新たな学びを模索することが求められている。教育現場のICT化が加速度を増しても,授業をコーディネートする教師の重要性は変わらないだろう。
目 次
第122号令和7年9月1日
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