「データ処理をすべて手元のExcel環境内で完結でき,食事調査から解析までを一連の流れとして実習に組み込める点で,大きなメリットを感じています」

東洋大学健康スポーツ科学部栄養科学科様では,2025年度より開講された「栄養疫学実習」において簡易食習慣評価ツール「MDHQ」を導入し,学生自らが回答・解析を行う実践的な演習ツールとして活用されています。

MDHQの導入経緯や授業での具体的な活用方法,教育効果について,ご担当の吉﨑貴大先生にお話を伺いました。

吉﨑 貴大 先生

東洋大学 健康スポーツ科学部 栄養科学科 准教授

吉﨑 貴大 先生

博士(食品栄養学)

Q1. MDHQを講義に採用された理由を教えてください。

私は「栄養疫学実習」を担当しており,テキストとして建帛社の『公衆栄養学・栄養疫学実習』を使用しております。本実習には食事調査法を実際に扱う回があり,学生が食事記録法やFFQの特徴を理解したうえで,自分たち大学生を対象とした食事調査を実施する構成としています。その際,FFQの候補を検討する中で,妥当性が確認されている対象者の年齢幅とは若干異なるものの,食事区分別の評価が可能で,フィードバックシートが充実しているMDHQを活用してみようという判断に至りました。

また,MDHQが買い切り型のソフトウェアとして提供されていた点も,採用理由の一つです。年度ごとの契約更新や回答件数に応じた従量課金が不要であるため予算面で導入の見通しを立てやすく,また,データ処理をすべて手元のExcel環境内で完結できるため,外部要因に左右されず処理過程を管理・統制しやすく,実習の運営に支障が生じにくいと考えました。

Q2. 講義での活用方法と,教員・学生の満足度について教えてください。

本実習では,MDHQに自ら回答し,そこからどのようなデータが得られるのかを理解してもらいます。具体的には,まず学生自身がMDHQに回答し,返却されたフィードバックシートを確認することで,自記式質問票からどのような情報が得られるのかを把握します。そのうえで,自分の結果を振り返るだけでなく,対象者「個人」に対してどのような情報を結果として返却できるのか,また栄養士としてFFQの結果返却内容をどのように説明すべきかを考察してもらいます。

全学生から得られたMDHQのデータは,「大学生の食生活および生活習慣に関する実態調査結果」として他のデータと突合し,以降の実習で用いるデータフレームとして活用しています。学生はExcelを用いてデータを要約し,図表を作成しながら全体像を概観したうえで,任意の目的を設定し,それを検討するために適切な解析手法を選択して解析計画を立案します。最終的には,既存情報あるいは新規に収集した情報から集団レベルの健康課題を抽出し,エビデンスに基づいた公衆栄養プログラムの計画へとつなげることを目標としています。

満足度については,特に学生の側から見ると,フィードバックシートが非常に手厚く,自身の食習慣の傾向をざっと把握できることから,非常に高いものと感じております。教員の視点からも,食事調査から解析までを一連の流れとして実習に組み込める点で,大きなメリットを感じています。

Q3. 運用面での所感や,今後期待する点があれば教えてください。

便利なソフトをご提供いただいておりますので,現時点で運用上の煩雑さを感じることはほとんどございません。強いて挙げるとすればWeb回答フォームにおける「データ送信先のメールアドレス」を個別に設定する必要がある点についてですが,例えば,一つの研究(あるいは調査)単位で回答結果のCSVファイルを一括取得できる仕組みがあれば,大変便利であると思います。

*建帛社注:Web回答フォームにおける回答結果の収集を代行するサービスを2026年11月より開始します。

また,スマホの利用機会も増えてきていますので,スマートフォンでの閲覧に適した結果票レイアウト(縦スクロールに合わせた結果票の表示)と,調査対象者が回答後に専用URLへアクセスし,自身の結果票を閲覧できる仕組みがあると,結果返却の利便性がさらに高まるように思います。

Q4. 今後の研究での活用予定や,他の研究者への推奨について教えてください。

教育での利用に加え,食事調査を必要とする研究には活用していきたいと考えております。特に,MDHQによって食事区分(朝食・昼食・夕食・間食)に分けた評価が可能となり,時間栄養学分野の研究を進めやすくなったと感じております。そのため,食事の時間軸に焦点を当てた研究での使用を検討しています。

ただし,栄養素・食品群摂取量の順位付けの精度は食事区分によって異なるとも報告されておりますので,研究目的に応じた使い方と結果の解釈には十分注意を払う必要があると認識しております。

教育の観点では,様々あるFFQの中でも非常に活用しやすいツールであり,ぜひお勧めしたいと考えております。Excel操作で直感的に扱うことができ,データ処理に手間がかかりません。学生にとっても結果票が充実しており,自身の食習慣の傾向をつかみやすいため,実習教材として大変扱いやすいと感じています。

一方,研究の観点では,食事調査票の選択は研究目的や対象集団に依存するため,一律にお勧めするというよりは,特に食事区分別の評価が必要な研究や時間栄養学的な研究テーマにおける選択肢として紹介したいと考えております。