はしがき

　近年，保育所や幼稚園，認定こども園など保育・教育の現場では，障害のある子ども，障害がなくても発達が気になる子ども，虐待を含めた家庭環境の問題が疑われる子どもなど，特別な配慮を必要とする子どもが増えたといわれています。そうした子ども自体が増加したのか，社会の変化を通して特別な配慮を必要とする子どもを捉えやすくなったことによるものなのかは，一概にはいえません。しかし，そのような子どもたちやケースの増加・多様化への対応の必要性を，社会が認識していることに変わりはなく，多様な子どもたちが共に育つ保育・教育が模索されるようになりました。

　これらの状況を踏まえ，保育・教育の各分野で専門職をめざす学生がこのような子どもたちを正しく理解できるよう，できるだけわかりやすく，実際に役立つ障害児保育・教育のテキストを作成することは，喫緊の課題であり，社会の要請に応えるものといえましょう。

　こうした趣旨の下，以下の点を特徴として本書の出版を企画しました。

① 　2019 年度より実施の保育士養成課程，教職課程コアカリキュラムに対応した入門テキストとして編集しました。保育士，幼稚園教諭，保育教諭などをめざす学生が，一人で読んでも学べるように，わかりやすく読み手に語りかけるように執筆しました。

② 　保育所，幼稚園，認定こども園などでの実習や就職してからの実際の支援に結び付けることができるように，各章・各節に具体的なエピソードを掲載しました。　

③ 　子どもの表面的な行動・態度だけでなく，気持ち（内面）に寄り添う保育・教育を基調にし，全編を通して大事にしました。

　本書が，特別な配慮を必要とする子どもの気持ち，さらにはその保護者の気持ちに寄り添い，特別な配慮を必要とする子どもの育ちを援助することができる保育者・教育者の養成に寄与することを，心から願っています。

　最後に，本書を刊行するにあたり，本書の趣旨に賛同して執筆を引き受けて下さいました執筆者の皆さま，そして企画・編集を通して温かく支えて下さいました建帛社の方々に，心より感謝申し上げます。

　2020 年１月

編者一同