専門性を持った保育者を目指す実習生に養ってほしい力,「実習力」をテーマに,経験豊富な執筆陣が多様性のある事例を盛り込んで解りやすく記述。
2019年度新保育士養成課程対応。
専門性を持った保育者を目指す実習生に養ってほしい力,「実習力」をテーマに,経験豊富な執筆陣が多様性のある事例を盛り込んで解りやすく記述。
2019年度新保育士養成課程対応。
今,この本を手にしてくださっている皆さんは,わが国の保育現場に携わる保育士や幼稚園教諭,保育教諭等の専門家として,将来活躍したいと思っている方々だと思います。皆さんが目指す保育職の重要性は,保育者に求められる「専門性(以下,保育力)」として,明治・大正・昭和・平成,そして令和の時代へと受け継がれてきました。保育制度もその間さまざまに変化し,昭和の保育を担ってきた「保育所」,「幼稚園」に加えて,平成には「認定こども園」が制度化されるなど,保育者の「保育力」も多様になっています。
現在の保育者の「保育力」に期待されることとして,大きくは二つ挙げられます。一つは子育て家庭の保育ニーズが高まり,保育施設の量的拡大に伴う,保育者(特に保育士)数の増加への期待です。保育の受け皿としての期待ともいえます。もう一つは,世界の多くの国々で注目されている,乳幼児期保育の質の向上への期待です。子どもたちが質の高い保育を受け,生きる力の基礎を培う教育的ステージとして,その成果が期待されています。このように保育者は,保育の量的拡大と,質の高い保育実践を期待される,社会的評価の高い職業へと変化してきました。
社会的な期待が高まる中で,『幼稚園教育要領』,『保育所保育指針』,『幼保連携型認定こども園教育・保育要領』の改訂(改定)を受け,2019 年に保育士養成課程の改定が行われました。その中では,乳児保育の充実,幼児教育の積極的な位置付け,健康管理および安全管理の見直し,保護者や地域と連携した子育て支援,職員の質の向上などが,「専門性(保育力)」として位置付けられています。他にも,早朝・延長保育,病児保育,特別に配慮の必要な子どもの保育など,多様で重大な取り組みへの期待も増大してきています。
このような背景の中で,皆さんが保育職へのあこがれをもつ一方,保育界では心身の負担が大きい仕事だと嘆く残念な風潮もうかがえます。ただ,保育者はそれをたった一人で背負っているわけではありません。園長,副園長,主任,クラス担任,補助スタッフ,医療関係・栄養関係スタッフなど,園内の専門家チームが連携し,心と知恵とスキルを寄せ合い,ワンチームで保育を営んでいます。そして常に,子ども一人ひとりの幸せを願い,「子どもが真ん中」の保育を推進しています。
では,実習生の皆さんは,どのような力を身に付ける必要があるのでしょうか。現場の保育者と同じ「保育力」を身に付けて実習に臨まなければならないのでしょうか。
いいえ,それは現実的にはとても無理な話です。経験豊かな保育者でも,一年一年の実践の積み重ねや自己研鑽,研修を経ながら,生涯をかけて目指すのが「保育力」です。だとすれば,実習生の段階では,保育者以前の「プレ保育力」を目指した学修が求められるのだと思います。「保育力を持った保育者」を目指すという目標を持ちながら,実際は,保育者の補助的な役割を担うプレ保育者として積極的に参加する姿勢,これを私たちは「実習力」と名付けました。
さあ,いよいよ保育現場で実習です。実習生に求められる「実習力」は,皆さん自身の積極的で前向きな心情・意欲・態度で向上するものです。この本を通して,実習生だからこそ身に付けたい知識・技能をスタートアップしましょう。
本書の特色は,まず,多くの執筆者が保育現場の保育者として実習生の指導を担当してきたという点です。もちろん,養成校での教育・保育実習の指導を担当してきた経験も豊富です。実習生一人ひとりの不安や悩みを出し合い,充実した実習を積み重ねられるよう,願いを込めて執筆に当たってくださいました。
また,各実習園のさまざまな保育形態,保育方法にも対応可能となるように,多様性のある事例を盛り込んでいます。本文の欄外には,「解説」「チェック!」「アドバイス」として,補足的な説明,確認事項,ワンポイントアドバイスを挿入しました。「実習力」を身に付けるための重要な学修ポイントとして注視し,活用してください。
そして,実習の準備期,実習中,終了した後までという,実習期間を横軸で捉える「実習力」と,一日の実習をどのように過ごすかという縦軸で捉える「実習力」の,両方を意識したテキストに仕上がっています。
今回,この「実習力」をテーマにした本書を完成できたのは,経験豊富な執筆陣の先生方によるご尽力の賜物です。また,本書の主旨をご理解いただき,常に実習生の気持ちを代弁し支えてくださった建帛社編集部に感謝を申し上げます。
本書が,「保育力」を身に付けていくステップとして,まずは実習生の「実習力」のアップに貢献できることを,私たちは心より願っています。
2020 年4 月
編著者を代表して 小泉裕子
プロローグ 実習生に求められる,活きて働く「実習力」
1.保育者に求められる専門性としての「保育力」「実践力」
2.実習生に求められる,活きて働く「実習力」
第1部 実習の前に
実習01 実習の基礎知識
実習02 実習の心得
実習03 実習のステップ
第2部 実習の中で
実習04 実習先でのオリエンテーション
実習05 指導計画の立て方を学ぶ
実習06 見学実習,観察・参加実習
実習07 責任実習(総合実習)
実習08 記録(実習日誌)の書き方・まとめ方を学ぶ
実習09 実習先での振り返り
第3部 実習が終わってから
実習10 養成校における自己評価・反省
実習11 養成校での事後指導
実習12 実習後の実習先との関わり
実習13 就職活動と実習
エピローグ 実習の総合的な振り返り
実習の準備段階から実習終了までの時系列をたどる形で章を構成し,各章の内容も実際に実習生が取り組む内容を時系列順で示す。「何を」「どのように」取り組めばよいのかを具体的に記述する。
平成29年告示の保育所保育指針,幼稚園教育要領,幼保連携型認定こども園教育要領の改定(訂)対応したテキスト。理論編,方法・技法編,実践・演習編の3部構成で展開。
幼稚園,保育所,福祉施設での実習に対応したテキスト。実習の事前学習と実習先での学び,事後学習まで網羅。2017年の幼稚園教育要領,幼保連携型認定こども園教育・保育要領,保育所保育指針対応。
保育実習(施設)に対応したテキスト。福祉施設の子ども・利用者の理解を念頭に置き,実習対象の全施設種別を網羅して丁寧に解説した。
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