建帛社だより「土筆」

平成20年1月1日

医療秘書教育の展望

医療秘書教育全国協議会事務局長  石本 良之この著者の書いた書籍

 本の人口は,2007年に1億2770万人に達し,そのピークを迎えた。そのため,医療・福祉の制度改革を2006年までに完結する計画のもと,医療制度構造改革として実施されてきた。



 008年4月から,医療制度構造改革の具体的施策が実施される。第一に,「医療費適正化計画」の5つの政策目標(第一期)がスタート,第二に,「新医療計画」において医療の質の維持・向上をテーマに都道府県に対して,より良質な医療の効率的提供の体制づくりを求めている。



 三に「地域ケア体制整備構想」であり,その中でも療養病床の転換の推進策が強行される。第四に「後期高齢者医療制度」のスタートが予定されている。第五に医療機関の情報開示の拡大とともに,医療法上の「標榜診療科見直し」であり,医学の専門分化とともに,診療科の広告を緩和し,各医療機関の医療機能を明確に開示することになる。



 のように,医療の構造的改革と,社会環境の変化により,医療現場においては,大改革を余儀なくされる状況にある。



 療秘書教育全国協議会では,医療制度改革後の医療機関の変革と,専門学校における医療秘書教育に,なにが求められているかを知るため,2005年11月に「医療秘書の実態調査」を実施した。この調査は,全国一般病院7,990病院を対象としたアンケートにより実施し,有効回答率は4.4%であった(2006年4月発表)。



 の調査結果から,医療秘書の教育について,即戦力としての教育があればよいとする病院と,病院医療の質的向上が叫ばれる中,より高度な専門職としての教育と,病院の有資格者の補助的業務ができる,有能な医療秘書が必要との意見があった。また,より複雑化・多様化する,医療・介護情勢を考えれば,専門学校の二年制カリキュラムでは限界にきているのではないかとする意見もあった。



 のように,病院の規模・特性,病院管理者の考え方等により,医療秘書教育に対応する考え方が,大きく二極化されることを踏まえ,医療業界の多様化するニーズにいかに応えるか,また,スペシャリストとしての医療秘書教育にいかに取り組むかを検討する必要があると考え,昨年8月に病院管理者にご協力願い,諮問委員会を設置した。



 たかもこの期に符合するかのごとく,昨年9月末,5大新聞の関西版に「医療秘書」の活字が大きく掲載された。厚生労働省は医師不足の緊急対策事業の1つとして,病院勤務医の負担軽減に資するよう,医師等のさまざまな事務を補助する医療補助者(医療秘書)の配置を推進するモデル事業等の創設を新年度予算に盛り込んだのである。



 008年度より,全国の自治体病院を中心に医療秘書のモデル事業が開始される予定であり,今後は必ず全国の医療法人に波及するであろう。



 療秘書教育全国協議会は,2007年度に設立二十周年を迎えた。これもひとえに皆様のご支援の賜物と深く感謝申し上げる次第である。医療秘書モデル事業の開始は,当協議会が20年間実施してきた,医療秘書技能検定試験はもとより,全国180校の会員校がもつ,医療秘書教育の実績とカリキュラムが,行政・各病院団体・医師会等から大きな評価を受ける絶好の機会である。日本の医療に貢献する当協議会の使命に向かって,さらに研鑽することを新年の決意とする。

目 次

第88号平成20年1月1日