建帛社だより「土筆」

平成22年1月1日号

平和の種をまく

共立女子大学 教授  入江 礼子この著者の書いた書籍

 MEP(世界幼児教育・保育機構)という団体をご存じだろうか? OMEPは第二次世界大戦直後,未だ戦火の消えないヨーロッパで,幼児教育にたずさわっている人々が,国境を越えて子ども達のために協力する目的をもった国際機関として創設された。その規約には設立当初よりOMEPの性格として次のことが記されている。

 ・OMEPは,国籍,人種,宗教,政治的信条を越えて協力する

 ・OMEPは,一国に一つだけの機関である

 ・OMEPは,幼児の保育・教育に関するユネスコの協力機関(NGO)である

  現在では50か国以上の国々が参加し,以下のことに力を尽くしている

 ・OMEPは,すべての子どもが,家庭や保育・教育機関,そして社会の中で,より良く発達し幸せになるように,最適条

  件を用意する

 ・この目的のために,OMEPは,幼児教育・保育を改善するためのあらゆる努力を支援する

 ・OMEPは,幼児教育・保育の向上に影響を与える研究を援助する。これによって,OMEPは人類の相互理解に貢

  献し,ひいては世界の平和に寄与する

 ・幼児教育・保育を振興させる

 本にはOMEP日本委員会があり,現在約200名の会員で構成されている。会員は保育者養成校の教員や現職の保育者が多くを占めている。

 去にはOMEPドイツ委員会との共催で幼児教育・保育研究者および保育者とのホームステイを基本とする交換プログラムを5回ほど行っている。また日本保育学会大会時にOMEPの世界各国の国内委員会から講演者を招いて,世界の幼児教育の動向を知るシンポジウムを開催してきた。ここ数年は保育学会と大会準備委員会との三者共催で国際シンポジウムを開催している。この国際シンポジウムでは近年,韓国,中国,台湾などのアジア地域のカレント・トピックスを取り上げたが,今年2010年の保育学会大会ではシンガポールの保育・家庭・地域の現状と課題を取り上げる予定になっている。

 ジア地域の幼児教育の現状や課題を取り上げてきた延長線として,2011年8月には日本でOMEPアジア・太平洋地域会議・セミナーを開催することを計画しており,現在その一歩を踏み出したところである。

 MEPが「人類の相互理解に貢献し,ひいては世界の平和に寄与すること」,そして「幼児教育・保育を振興させる」ことに力を尽くす団体であることを考えると,ここでなさなくてはならないことは自ずとみえてくる。それはファンドレイジングである。アジア・太平洋地域の幼児教育・保育の状況はというと,経済的なことに限って言えば日本で行われる会議やセミナーに参加したくてもできない国も多々ある現状があるからである。現職の保育者が自国以外の保育に触れることは,自身の保育を振り返り,明日の保育を構想するうえでも大きな意味をもつ。また招く側も文化差のある人々と親しく交わることで学び,知見を開かれることがある。アジアの国々の保育者が日本に集って一人ひとりの顔がみえる中でお互いを知り,学び合うことは,まさしく明日に向けて「平和の種」を蒔くことであるといえる。多くの方々がこの地域会議・セミナーに参加されることを願ってやまない。

(OMEPのHP http://wwwsoc.nii.ac.jp/omepjpn)

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第91号平成22年1月1日号