平成24年1月1日
教師と保育士との連携
新潟県立大学准教授 植木 信一この著者の書いた書籍
筆者は最近,A県B町の文教施設整備委員会が設置する三つの分科会(教育分科会・建設分科会・保育分科会)のうち保育分科会の座長を務めた。教育分科会および建設分科会においては統合小・中学校について議論した一方で,保育分科会では,小・中学校の統合課題には一切関与せず,同一敷地内に新設する認定こども園と統合小・中学校との連携のあり方について議論した。
認定こども園とは,わかりやすく言えば,従来の幼稚園と保育所の機能を合わせた第三の幼保一体型施設である。B町に新設される認定こども園は,保育所を母体としそこに幼稚園機能をもった「保育所型認定こども園」として想定されている。
B町には,私立保育所がなく,既存の五園すべてが公立保育所であるため,認定こども園となった後も公立の施設として新設されることを確認した。したがって,保育分科会で議論される内容も,B町の公的責任によって遂行される内容であるということになり重要な議論ポイントとなった。
保育サービス内容を公的責任により充実させることは,保護者の就労機会を保障することであり,厳密に言えば,母子世帯等を含めた多様な家庭の福祉を公的に保障することに等しい。何より認定こども園は,地域のすべての子育て家庭を対象とすることができるため,その特長を活かしながらB町としての公的責任をはたすことが重要である。そして,それらの成果は,結果的に「子どもの最善の利益」を保障することにもつながる。
また,認定こども園と統合小・中学校との連携を推進していこうとする場合,行事を合同で実施しさえすればすなわち連携したことになると判断してはならない。大切なことは,「連携する」という手段を用いたときに,それが「子どもの最善の利益」という目的につながる有機的なシステムになっているかどうかということである。
認定こども園と統合小・中学校を同一敷地内に置くねらいとして,あらかじめB町役場内部で検討された結果,出てきた課題の一つに「小一プロブレム」があるとされた。保育分科会で「小一プロブレム」とは,「入学したばかりの児童が,落ち着いて授業を受けることのできない状態が数か月続くことである」と定義した。そこで,保育分科会において,B町の「小一プロブレム」について説明を受け議論した。
結論からいえば,B町の「小一プロブレム」とは,「子どもに存在するプロブレム」ではなく,その子どもにかかわる「教師と保育士間の認識差のプロブレム」であることがわかった。つまり,問題は子どもの側にあるのではなく,大人の側の認識の差であり,子どもに対する教師のかかわり認識と保育士のかかわり認識との両者間の相違が,直接子どもに影響することこそがプロブレムなのではないかということである。
したがって,認定こども園の保育士と,統合小・中学校の教師との連携は,「有機的連携」でなければならないというのが保育分科会の結論である。それは,家庭との連携においても,地域との連携においても同様であると考えられる。それらは,すべて「子どもの最善の利益」のためであることを忘れてはならない。
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